放課後も四人一緒に帰ったけど、正也ん家には妙子さんはいなかった。
先に帰ってた達也が、
「琴音、これお母さんが渡しとけって。」
それは1通の手紙だった。
リビングにあったはさみを達也に借りて、便箋を開けて読んでみた。
『琴音へ
今日は、昨日の事もあったので裕子さんのそばに琴音が帰ってくるまで
琴音の家にいます。帰りは急がなくてもいいから
今の学校は前の学校より授業が進んでるらしいから
正也達に教えてもらいなさい』
真吾が横から読もうとしてたけど、私は手紙を私の方を向けて読んだから
真吾には多分読まれてないと思う。
「なんだって?」
「相談したい事があったんだけど仕事だからまた今度にしてくれるって。」
まだ、真吾や正也には昨日の事は言えないし。
「ふ~ん。」
真吾は納得してないみたいだったけど、正也は黙ってた。
もしかして昨日の事、正也に話したのかな。
あんな大事件、正也に話すかな?でもきっとオーナーは知ってると思う。
オーナーもいつもお母さんの事心配してたし。
自分達で勝手に飲み物をグラスに入れて、正也の部屋に入ると
真吾と正也はオセロを始めて、私は前の学校でまだ授業に出てなかった所を
守に教えてもらってた。
しばらくするとオーナーが帰ってきて、
「琴音、ちょっと。」
「また琴音と密談かよ。」
真吾は口をとがらせてたけど、きっと昨日の事だろうな。
私は普段は飲まないアイスコーヒーをもって下のリビングに行った。
オーナーは煙草を吸いながら、書類を見ていた。
「昨日は大変だったな。」
「うん。でも守にも助けてもらったし、妙子さんにもお説教してもらったから
もう二度とあんな事しないと思う。ただ…。」
「『ただ』なんだ?」
「離婚するのは時間の問題だと思う。お父さんは付き合ってる人と別れるって言ってたけど
別れないと思うし、あんなお父さんと私が一緒に住みたくないし。」
「そうかもしれないな。でも悟の性格上あっさり離婚しないと思うよ。」
「どうゆう意味?」
「多分、琴音の教育費や慰謝料は出さないと思う。」
「だって、お父さんから離婚を言い出してるんだよ。そんなの勝手だよ。」
「俺の知り合いに弁護士がいるからもし、家庭裁判になったら頼んでみるよ。
どう見ても悟の方が悪いからな。」
「ありがとう。ね、オーナー。うちってやっぱり離婚すると思う?」
「どうだろうな。悟は離婚をしたがってるみたいだけど、裕子さんはずっと専業主婦だったからな。
今、離婚しても不利だとわかってるから応じないと思うよ。
ただ、冷え切った家庭になってしまうのはしょうがないかもしれない。
家庭の数だけ色んな家庭の事情があるから。」
私はもう二度とお父さんと会話もしたくなかったけど、進学の代金とかはやっぱりバイトじゃ
賄えないと思うから今、離婚されたら確かに困るな。