こんな深刻な話しをしてる時に限って邪魔が入る。
井上君がまた正也ん家に来たから。
「こんにちわ。大原の前のクラスメートの井上です。」
井上君が来たからお父さんの話を妙子さんは辞めてしまったけど、なんでこんなタイミングで来るかな。
「井上君さぁ、私も転校したんだから私にまとわりつくの辞めたら?」
「いやいや。濟々黌の制服を着た大原が見たくて。どうだった?初日は。」
「まぁまぁよ。」
まだ玄関にいる井上君が妙子さんに、
「お邪魔してもいいですか?」
なんて聞いてる。ホントずうずうしいんだから。
「どうぞ。琴音、今の話まだ終わってないから。帰りにちょっと寄りなさい。」
「うん。」
井上君は自分の家でもないのに正也の部屋に直行するとノックもせずに正也の部屋に入って行った。
三人は私が部屋に来たんだろうと思ってたらしく、井上君の登場にびっくりしてた。
「お前、まだ琴音についてまわってるのかよ。」
「あの日の事忘れてないだろうな。」
きっと『あの日』って井上君がボコられた日の事だろうな。
「琴音、妙子さんの話ってなんだったんだよ。」
「井上君が来ちゃったからまだ途中。」
ホントはお父さんが不倫してて、その相手の人が妊娠したかもなんて恥ずかしくて言えないじゃない。
「どうだった?新しい学校は?」
ここに座るのが当たり前の様に正也のベットに腰掛けると今日の学校の感想を聞いて来た。
「人の数程、問題はあるって事よ。」
「なんだよ。すでにいじめの対象になったのかよ。」
「そんなんじゃないけど、私が真吾や守と仲が良かったのが珍しかったんじゃない?」
井上君は慣れた手つきで煙草を出すと火をつけた。
「ここん家って煙草許可されてるんだよな。」
「だからっていきなり来て、堂々と煙草を吸うのってちょっとずうずうしくない?」
三人はさっきから井上君の事を全く無視してる。
私も無視しちゃおうかな。相手にしてるのがばかばかしくなってきた。
「悪いけど、転校先の学校の授業が少し進んでたから今から勉強するの。帰ってくれる?」
すると井上君は本当に傷つけられたみたいな顔をした。
「あ~あ。俺も大原に嫌われたもんだな。」
「当たり前jでしょ。あんな事したんだから。」
『あんな事』とはいきなり抱き付いてきてキスされた事。
ファーストキスは守が良かったなぁ。
今日も守に送ってもらおう。その方が安心だし。
あ…。でもうちが離婚するかもしれないなら、真吾の意見も聞いてみた方がいいかなぁ。
真吾が正直に話すとは思えないけど。だって小学3年生の時の事だもんね。
今じゃお母さん違いの妹がいる。その子の事は可愛がってるみたいだけど
新しいお父さんとはうまくいってないみたいだし…。
やめとこ。誰だって聞かれたくない事ってあるよね。
やっぱり守に送ってもらおう。
そんな事を考えてたら井上君の姿がなかった。
「井上君は?」
「さっき帰った。まぁ琴音に彼氏が出来たって事でいつかは諦めるだろ。なぁ守。」
「俺はそれを願うだけだどな。」
私もそう思ってるんですけど。