放課後になって、私は一人帰り支度をしてた。
そこへ田所君が来て、
「なぁ、井上に聞いたんだけど転校するんだって?」
「まだわかんない。転入テストで不合格になったら無理だし。」
「ただでさえ女子が少ないんだから、大原が抜けたら痛いなぁ。」
「みんなそう言うね。でも私、日本史の事をもっと詳しく勉強したいし。」
「日本史だったら山田に聞けばいいじゃないか。」
「そうだけど…。色々あるのよ。」
私と田所君が話してるのをジッと井上君は見ていた。
…。知るもんか。井上君の事なんて。
田所君は声をひそめて、
「井上になんかされたのか?」
って聞いて来た。思わず田所君の顔を見てしまった。まさか井上君が言いふらした訳じゃないよね。
「…。別に。」
「だってさぁ、大原が休み出してから井上の奴、大原にちょっかいださなくなっただろ?
何かあったのかなって思って。」
「特別、何もないよ。」
私はそう言うしかなかった。まさか抱き付かれたうえにキスまでされたなんて言えない。
「私、今日C組の三浦さんと帰るの。またね。」
それは田所君に言った事でもあるけど、井上君にも聞こえる様にも言った。
これで今日はついてこないだろな。
私は校門まで行くと三浦さんはまだ来てなかった。
三浦さんのクラス、C組の担任の先生はホームルームとかが長いので有名だ。
まだやってるのかな。
しばらくすると三浦さんが校門まで走ってきた。
「ごめん、ごめん。担任の話が長くって。あんなに演説しても誰も聞いてないのに。」
「大丈夫。じゃ、帰ろうっか。」
帰りの電車の中では三浦さんが同じクラスの男子に告られた事を聞かされた。
「やっぱ、女子が少ないからそうなるのかなぁ。」
「そうじゃない?」
「大原さんも井上君がよくくっついてたけど、最近そうでもないね。」
「私が相手にしないから諦めたんでしょ?」
まさか真吾達にボコられたとは言えないしね。
正也ん家の最寄駅に着いて降りた時、
「ねぇ、この辺にケーキ屋さんある?」
って三浦さんが聞いてきた。
「ちょっと歩いたとこにあるよ。」
「大原さんの友達ん家に行くんだもん。何か差し入れしていくよ。」
「いいよ。そんなの気にする人達じゃないし。」
「ううん。私がそうしたいの。」
「そこまで気にしなくていいのに…。」
「いいの。私がケーキ食べたいって言うのもあるから。」
そういう訳で私達はケーキ屋さんに寄って、ケーキを6つ買って正也ん家に向かった。
「ねぇ、なんで6つも買ったの?」
「だって大原さんの友達の分が3つでしょ?私達の分が2つでしょ。
あとは今から行く正也君のお母さんの分。」
こういうところを女の子らしいって言うのかもしれない。