幼馴染み 65話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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私は妙子さんに転校の決意を言うと再び正也の部屋に戻った。


「私、お母さんに転校の事話すから今日は帰るね。」


「分かった。じゃぁ…。」


三人が私を送る係りを決めてる時に井上君が、


「今日は俺が送るよ。話したい事もあるし。」


「二人っきりだからって、琴音に手ぇ出すなよ。」


正也が井上君に念を押した。


「分かってるって。お前らだって中間テストの勉強したいだろ。代行、代行。」


そう言う訳で今日は井上君に送ってもらう事になった。


でも井上君って私の家知らないじゃないの?


「井上君が送ってくれるのはいいけど、私の家知ってるの?」


「知らねぇけど、大原が教えてくれたらいいだけの話だろ。」


私としては家まで教えたくないんだけど。でも正也達がテスト勉強で忙しいのは変わりないもんね。


しょうがないか。


井上君と二人で下に降りて、妙子さんに


「お邪魔しました。」


って挨拶してから玄関を出ようとした。


「早いのね。裕子さんに転校の事話すの?」


「うん。どんな手続きが必要か聞いときたいし。」


「井上君は琴音の家知ってるの?」


「知らないけど大原に聞きながら送ります。上の三人はテスト勉強で忙しそうだし。」


「そう。気をつけて帰りなさい。」


私は靴を履くとさっさと正也の家を出てしまった。


本来なら三人のうちの誰かに送ってもらいたかったのに。


私は正也ん家からそう遠くない私の家への道を教えながら自宅に戻った。


「なぁ、本当に転校するのかよ。」


「私、一度決めた事は曲げない性格なの。」


「あ~あ。これで大原とは学校で会えなくなるのか。まっいっか。デートの約束もしてるし。」


井上君はバックを頭の後ろにしながら気楽な事を言った。


「私はデートのつもりじゃないよ。守達に勧められて井上君と出かけてみてもいいかなって思っただけ。」


「そんな冷たい事言うなよ。」


そんな話をしてるうちにうちについてしまった。


「すげ~な。大原ん家ってでかい。」


「そう?じゃぁ送ってくれてありがとう。」


玄関に向かおうとしたら井上君に腕を掴まれた。そしていきなり抱き付いて来た。


「何すんのよっ。」


そんな私の言葉を無視して井上君は事もあろうかキスまでしてきた。


キスなんてした事ないから井上君の歯と私の歯がぶつかってしまった。


私は思わずビンタをしてしまった。そしてキスされた唇をハンカチで拭いた。


「もうすぐで会えなくなるんだ。これからはもっと積極的にしようと思って。」


「だからってやっていい事と悪い事位わかるでしょ。もう井上君には送ってもらわない。


何されるかわかんないんだもん。それとこの事あの三人に言うから。


正也に言われたでしょ。私に何もするなって。きっと怒ると思うよ。」


私は一気にそれだけを言うと井上君の腕を振りほどいて玄関に走って入った。


…。何してくれんのよ。せっかくのファーストキスだったのに。


あいつサイテー。