井上君と三人が盛り上がってるから私は帰る事にした。
「男の子同士盛り上がってるみたいだから、私今日は帰るね。」
「じゃぁ今日は誰が琴音を送る?」
それを聞いた井上君は、
「わざわざ大原を送ってるのかよ。」
「一応女の子だからな。いつも誰かが送ってるんだよ。」
「随分と優しくしてるんだな。」
「今日は俺が送るよ。」
今日の当番は正也になった。
「じゃぁね、また明日。」
帰りがけ正也は、
「琴音。」
「何?」
「あの井上って奴と付き合うのか?」
「まだわかんない。でも今度遊びに行こうって誘われてる。」
「…。」
「別に付き合う事を前提に遊びに行く訳じゃないよ。」
「ふ~ん。」
正也は面白くなさそうに返事をした。
「私は彼氏より、日本史の方が面白いの。だから当分彼氏は作らない。」
「そっか。」
うちに着くとお母さんが正也に上がっていく様に勧めた。
「いっつも琴音が正也君の家に行ってるでしょ?たまにはうちに来れば?」
「せっかくなんですけど、まだうちに真吾達がいるので今日は帰ります。
今度遊びに来ます。」
「そう。…。妙子さん何か言ってた?」
多分お父さんの浮気の事だろうな。でも妙子さんが正也にそんな事を話すとは思えない。
「特別何も言ってませんでしたよ。」
「正也。」
「何?」
「こないだ貸した近藤 勇の本読んでる?」
「たまに読んでる。」
「本にマーカーなんて引かないでね。」
「分かってるよ。じゃぁな。」
正也が帰ったあと、お母さんが、
「今日の正也君、なんか元気なかったね。」
「そういう日もあるでしょ。」
井上君の事できっと面白くなかったんだと思う。
でもまだお母さんには井上君の事は話してないし、話す必要もないと思ったからあえて言わなかった。
部屋に入って普段着に着替えてから、今日山田先生に教えてもらった織田 信長の事をノートにまとめた。
机のノートを並べる所を見ると、もう30冊以上歴史のノートがある。
中学生の頃から書き続けてたからそれぐらいにはなる。
皆は私が歴史好きなのを呆れてるけど、私にとっては人生そのものだ。
そっとそのノートの束を撫でるとなんだか嬉しくなって笑ってしまった。