幼馴染み 60話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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井上君と三人が盛り上がってるから私は帰る事にした。


「男の子同士盛り上がってるみたいだから、私今日は帰るね。」


「じゃぁ今日は誰が琴音を送る?」


それを聞いた井上君は、


「わざわざ大原を送ってるのかよ。」


「一応女の子だからな。いつも誰かが送ってるんだよ。」


「随分と優しくしてるんだな。」


「今日は俺が送るよ。」


今日の当番は正也になった。


「じゃぁね、また明日。」


帰りがけ正也は、


「琴音。」


「何?」


「あの井上って奴と付き合うのか?」


「まだわかんない。でも今度遊びに行こうって誘われてる。」


「…。」


「別に付き合う事を前提に遊びに行く訳じゃないよ。」


「ふ~ん。」


正也は面白くなさそうに返事をした。


「私は彼氏より、日本史の方が面白いの。だから当分彼氏は作らない。」


「そっか。」


うちに着くとお母さんが正也に上がっていく様に勧めた。


「いっつも琴音が正也君の家に行ってるでしょ?たまにはうちに来れば?」


「せっかくなんですけど、まだうちに真吾達がいるので今日は帰ります。


今度遊びに来ます。」


「そう。…。妙子さん何か言ってた?」


多分お父さんの浮気の事だろうな。でも妙子さんが正也にそんな事を話すとは思えない。


「特別何も言ってませんでしたよ。」


「正也。」


「何?」


「こないだ貸した近藤 勇の本読んでる?」


「たまに読んでる。」


「本にマーカーなんて引かないでね。」


「分かってるよ。じゃぁな。」


正也が帰ったあと、お母さんが、


「今日の正也君、なんか元気なかったね。」


「そういう日もあるでしょ。」


井上君の事できっと面白くなかったんだと思う。


でもまだお母さんには井上君の事は話してないし、話す必要もないと思ったからあえて言わなかった。


部屋に入って普段着に着替えてから、今日山田先生に教えてもらった織田 信長の事をノートにまとめた。


机のノートを並べる所を見ると、もう30冊以上歴史のノートがある。


中学生の頃から書き続けてたからそれぐらいにはなる。


皆は私が歴史好きなのを呆れてるけど、私にとっては人生そのものだ。


そっとそのノートの束を撫でるとなんだか嬉しくなって笑ってしまった。