正也ん家に行くともう三人は来ていた。
私の後ろに井上君がいたのに少し驚いてたみたいだけど。
「あれ?こいつ前に琴音について来た奴だよな。」
「なんか私達がいつも何を話してるのか聞きたいんだって。」
妙子さんもいつもは来ない井上君に、
「あら、琴音の友達?」
「初めまして。大原の彼氏候補の井上です。」
「なによ~。琴音もようやく彼氏を作る気になったの?」
「違います。ただのクラスメート。」
妙子さんは井上君の分のアイスコーヒーを持ってきて、
「琴音に友達が増えるのはいい事じゃないの。前に来た三浦さんもそうでしょ。」
「三浦ってC組の?」
「そう。一回だけきた事があるの。」
真吾が面白そうに、
「で?俺達の話聞いてどうすんの?」
「お前ら、大原の幼馴染みなんだろ。高校に入る前の大原の事聞きたくて。」
「俺は高校に入ってから琴音と知り合ったからそこまで詳しくないぞ。」
守は私用の数学の問題を書きながら井上君を見た。
「まぁいいや。その辺に座れよ。」
真吾が相変わらず煙草を吸いながら井上君が座る場所を作った。
「ここは勉強するとこなのか?それとも煙草を隠れて吸う所なのか?」
「琴音は数学が苦手だからな。守が教えてやってんだよ。」
「へぇ。日本史は超得意なのにな。」
真吾と守が井上君と話してるのに正也は黙ったまま、また中国史の本を読んでいた。
「琴音の何が知りたいんだよ。」
「だから、高校に入る前の大原の事。」
「ふ~ん。琴音はあんまり女友達がいなかったな。
あんまりって言うよりほとんどいなかったんじゃないか。」
「何で?」
「女子ってさ、とにかく群がるだろ。派閥があったり。それが嫌いなんだ。」
「だからか。元男子校に入学したのは。」
「違う、違う。単に通学距離が近いからってだけで入学したんだよ。
中学の時の成績は俺達と変わんないのに。」
「お前らの学校ってどこ?」
「濟々黌。」
「超進学校じゃん。」
私は男子の話を聞いてるとこの男子同士、気が合うのかなって思った。
守が前に、
『結構いい奴かもしれない』って言ったのを思い出した。
男の子同士、話が合うのかなぁ。
「それで?琴音の事はまだ諦めてないのか?」
「全然。むしろ燃えてきた。それにしてもさ、さっきから本読んでる奴…。」
「こいつ?正也って言うんだ。中国史が好きでいっつも本ばっかり読んでる。ちなみに俺は真吾。
数学を教えてるのが守。正也が一番琴音と付き合いが長いんじゃないのかな。」
「誰も大原と付き合いたいとか思わねぇの?」
「付き合いが長い分、そんな事考えもしないよ。まぁ正也はどうか知らないけど。」
真吾は本当に余計な事を言う。
「じゃぁ、そいつと俺はライバルって事か。」
「さぁな。」
今日は井上君も来てたし、私が会話に参加する余地はなかった。
妙子さんにお父さんの事相談しに行こうかな。きっとお母さん、お父さんの浮気の事相談したと思うから。