次の日、登校したらいつも以上に視線を感じた。
女子が三人しかいないからよく、チラチラ見られる事はあったけど今日はなんだか露骨…。
なんだろう。
そんな事考えながら教室に入ろうとしたら、田所君が私が教室に入るのを止めた。
「あっ。大原。お、おはよう。まだ教室に入るのは早くないか?」
「早いも遅いもないでしょ?バックを置きたいの。どいて。」
「ちょっと待てよ。」
私は田所君の静止を振りほどいて教室に入った。
教室に入ると田所君が私を教室に入れようとしなかった訳がわかった。
黒板に大きく、
『新婚おめでとう 井上&大原』
って書いてあるのを井上君が一生懸命拭いていた。
私はそれを見て、バックを落としそうになったけど、
周りの男子の口笛を吹きなたらからかってるのに気が付いて
黙って自分の机にバックを置くと井上君と一緒に黒板に書いてあるのを消した。
それを見ていた男子からは、
「二人の共同作業ですか~。」
なんて声が聞こえたから私は振り返り、その男子を睨んだ。
「やる事が幼稚なのよ。もっと他に頭使えないの?」
「俺達は祝福してやってんだぜ。」
「これのどこが?ますます頭に血が回ってない証拠ね。」
「大原、相手にすんな。」
井上君はそう言ってるけど、やる事が低レベル過ぎて頭に来る。
田所君も一緒になって黒板の文字を消してくれたけど、
ウェディングケーキのイラストとか、似てもいない私達のイラストなんか書いてあって
山田先生が来る前までには全部は消せなかった。
山田先生は黒板に残された字の破片や、イラストの残りを見ると黙って大きな身体を使って
黒板消しでそれを全部拭いてくれた。
その間、クラスのみんなはニヤニヤしてる人もいたし、
「せんせ~。新婚さん誕生で~す。」
なんてバカな事を言ってる、本当のバカもいた。
先生は全部消すと、
「え~。前に先生は『大きい事はいい事』と言いましたが…。」
そこまでは物静かな喋り方で、内心
(説得力がないな)
って思っていたけど、教壇を叩くと、
「こういう事に黒板を使うんじゃない!!」
って大きな声で言ったからびっくりしちゃった。
「黒板は勉強の為に使うんだ。こんなふざけた事には使うんじゃない。」
皆が黙っちゃってると、
「返事は?」
ポツポツと、
「は~い。」
「すんません。」
って返ってきた。日頃、穏やかな人って怒ると怖いんだなぁって言うのがよく分かった。