釈然としない気持ちで正也の部屋に戻ると、
「何だったんだよ。妙子さんの話。」
真吾が先に聞いて来た。これって…。言わない方がいいよね。
「前に相談した事があってその事。」
「ふ~ん。」
明らかに真吾は信じてない視線だったけど、私は嘘を突き通した。
だってこれはうちの話であって、真吾に言う事じゃないと思ったから。
私が黙っちゃったから守が話題を出してくれたけど…。
「それで?あの井上って奴とどうするんだよ。」
「どうって言われても。ただのクラスメートだし。」
「だけど、結構あいつ琴音に熱心だと思うけど。琴音ってさ男の俺としては付き合いやすい
サバサバした女友達だけど、女の子としての資質がちょっと足りないよな。」
「いいじゃん。今の私のままで。」
「いやいや。大学とかまで行ってその性格だと間違いなく彼氏が出来ないぞ。」
大学かぁ。進路どうしよう。山田先生みたいになれたらいいけど
教職免許って確か難しいって聞いた。一ちゃんから。
ふくれてしまった私に守は、
「だからさ、外見だけでも女の子に見える様に髪伸ばせよ。」
また、その話?
「俺はこないだ見た写真の琴音がいいな。」
…。髪伸ばそうかな。べっ別に守の為じゃないよ。そういうアドバイスがあったからであって。
私は短い髪を引っ張って、
「もし、私が髪の毛伸ばしたら、あんた達の態度も変わるの?」
「変わらないな。」
真吾と守はそう言ったけど、守は
「俺は変わるかもしれない。」
って言った。何よ。外見で態度を変えるの?それも変だと思うけど。
「だって新鮮じゃないか。髪の長い琴音って。」
う~ん。小学、中学の時は髪が長かったのを知ってる真吾と正也が態度が変わらないのはわかったけど
やっぱり実際に髪が長いのを見ると違った視線で守は私の事を見るのかな。
「あの井上もお前を見る目が違ってくるしな。」
「また井上君の話?もういいじゃん。」
「いやいや。琴音の初彼氏になるかもしれない奴なんだ。しっかり見極めないと。」
「あんた達は私の保護者?」
「琴音の彼氏関係についてはそうだな。」
真吾がうなずきながら言ってる。…。自分は自分の事をあんまり言わない癖して。
井上君が私の彼氏になるって想像もつかないんだけど。
だからってこないだ守が言ってたみたいに正也と付き合うのも想像つかないし。
大体、『彼氏』って言うのが想像つかない。
守が言う通りに私って女の子の資質がないのかなぁ。