篤も加奈子も大きくなってきて、いたずらをする様になった。
綺麗だった壁には落書きをするし、人気のアニメシールを買え与えると所構わず貼り付けていった。
クレヨンを水で落とせるのにしててよかった。
落書きをした所をせっせと私は拭いたけど、白くなった途端にまた落書きをする。
「篤!加奈子!落書きはダメって言ったでしょ。」
「だってお絵かき好きなんだもん。」
「私はお母さんとお父さんの顔を書いてるの。」
叱る度に言い訳をする。
反抗期になったら、もっと大変なんだろうなぁ。
彰君はチーフ長になった。少しづつだけどお給料が上がるのは助かる。
なんてったって二人分の養育費が必要だから。
私も受付でチーフになった。新人教育は大変だったけどやりがいはあった。
佐藤さんはフレンチの店長から本店のフレンチに移動になった。
新しく来た店長は穏やかな人で、本当にこのホテルは人材がいいんだなって思った。
ある日彰君が、
「なぁ佳那。子供、もっと欲しくないか?」
と、言ってきた。
双子の子供を育てるは大変なのにこれ以上子供ができたらもっと大変そう。
でも彰君は子供好きだからなぁ。
「でもあなた、今は篤もいるし加奈子もいるのよ。」
私は子供ができてから彰君の事を『あなた』と呼ぶ様になった。
子供達が彰君の事を私の真似をして『彰君』と呼ぶ様になったからだ。
それだけ私達の結婚生活も長くなったという訳だ。
月日が流れるのは早い。特に子供がいるとしみじみ感じる。
「考えとく。」
私はそれだけ答えた。
私も彰君もそれなりの責任者になったから、子供をまた授かるのは難しいと思った。
それに子宮のポリープの事も気になったし。
何度目かの結婚記念日に私と彰君は久しぶりに二人っきりで食事に出かけた。
子供達は幼稚園に預けてくれてる。
「早いもんだなぁ。俺達が出会って何年経った?」
「6~7年じゃないの?」
「俺は佳那と会って、すぐに『こいつと付き合う』って思ったけど佳那はどうだった?」
「私はあなたの第一印象は最悪だったからそんな事考えもしなかった。」
「ひでぇ。」
「でも良かったと思ってる。子供は諦めた方がいいって言われたのに篤にも加奈子にも恵まれたし。
それに私達一回も夫婦喧嘩してないでしょ?」
「言われてみればそうだな。」
「お父さん達みたいな夫婦にならなくて本当に良かった。今はあなたに感謝してるわ。」
「それは俺も同じだよ。」
私達って理想の夫婦かもしれない。