私の彼、紹介します 53話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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「で?今度は彰君の番。どうだった?今日来てみて。」


コーヒーの香りを何回も嗅いでいる彰君に聞いてみた。


そんなに下手かなぁ…。コーヒー。


「俺が知ってる奴は大木と相馬、佳那位だったかな?まぁシフトの状態もあるだろうけど。」


「今日、田口君は休みだったよ。」


「じゃぁ、俺が知ってるのはその4人だけだな。あとは素人もいいところだ。」


「彰君の接客をしたのは誰?」


「知らない奴だった。だけど手のひらに料理の説明を書いてたんだろうな。やたらと手を見てる奴だった。」


「あぁ、それなら榎君だ。最初はメモ帳に書いてたんだけど、


お客様の前でメモ帳は禁止って言われてたから。」


「味は今まで食った事ないから何とも言えないけど、接客の仕方がマズい。


あれじゃファミレスの方がマシだ。でもこれは私情が入るのかもしれないけど、佳那は成長したよな。」


「ホント!?嬉しいな。毎日練習してた快があった。」


「佳那もあのレベルまで来たなら他のホテルにしろよ。」


「だってあそこ、うちから近いんだもん。」


「レ・べ・ル・ア・ップ!」


「そうだけど…。彰君までのレベルではないよ。」


「そりゃそうだ。経験が違う。だけど給料は少しは良くなる。」


「うっ…。お金の事を言われると痛い。」


今のホテルのお給料だと、ギリギリの生活だからだ。


この歳になると親にも仕送りぐらいしてあげたいし。


彰君だってお母さんに仕送りしてる位だし、年上の私がしてないってのもおかしいよね。


この話はこの辺にして、今度はカップルらしい会話がしたかった。


「帰りが遅くなってごめんね。ご飯は?」


「適当に冷蔵庫漁って作った。もうちょっと食料入れとけよ。空に近かったぞ。」


「だって、お給料前…。」


「俺は給料前でも冷蔵庫は充実してるぞ。」


「そりゃ、彰君の方がお給料いいんだもん。うちがお給料少ないの知ってるでしょ。」


「普通のバイト代にしては高いけど、ホテルで働いてる割りには安いのは確かだな。


あっ、そうだ。これ佳那に見せようと思って持ってきたんだ。」


それは銀行の通帳だった。名義は彰君になってるけど表に『佳那用』って書いてある。


「どうしたの?それ。」


「俺、職場変わっただろ?給料も少しだけど良くなったんだ。


その分を佳那との結婚資金にしようと思って、これに少しづつ入れていくんだ。」


「本当に私と結婚してくれるの?」


「だって佳那だってアラサーだろ。」


「それは禁句。」


「事実だ。」


「も~。」


私は照れ隠しもあったけど、クッションを彰君に投げつけた。


彰君と私が結婚かぁ…。


そうだよねぇ。この歳になると結婚も考えながら付き合わないといけないよね。


って事は私が彰君のお嫁さんになったら『柳沢 佳那』?


なんかゴロが悪い様な気がする…。慣れてないからかな?