Tomorrow is another day 第2章 始めからの方はこちらから
インターフォン越しの千夏の顔を見て思わず眉間に皺が寄ってしまった。
自分から離婚を言い出しておいて、今さら何の用だろう。
しかも、普通だったらこの時間は仕事に行っていていないはずなのは知ってる事だ。
居留守をしてても、今からこちらに向かっている麻子と鉢合わせするのは確実だったので
部屋には入れなくてもインターフォンだけで返事をした。
「今さらなんだよ。」
「何よ。入院したっていうから心配して来てやったのに。それよりここ開けて。」
「あの男とよろしくやってるんだろ。前の旦那に何の用だ。」
「あんな男、とっくに別れたわ。だから入れて。」
「今から客が来るんだ。帰ってくれ。」
そんな会話をしているうちに、タイミング悪く麻子がビニール袋に食材を入れて来てしまった。
麻子の姿を千夏が確認すると、いつもの冷笑をした。
「何?あなたまだ中島と付き合ってるの?」
「なんであなたがここにいるんですか?」
「私の質問の答えになってないわ。」
「付き合いと言ってもご近所付き合いです。独身になられて家事のお手伝いを時々してるだけです。」
「ふ~ん。随分と昔の男に親切なのね。まぁいいわ。あなたが来たなら帰るから。」
そう言い捨てると、くるりと方向を変えて帰っていった。
「中島さん?麻子です。」
「今開ける。」
エントランスの扉が開いて麻子は中に入っていった。
それを帰ったはずの千夏が携帯で写真を撮っていた。
「悪いな。忙しいのに。」
「いいのよ。気分転換になるから。」
「それと…。下で千夏に会っただろう。」
「えぇ。」
「何か言われなかったか?」
「特別…。それよりいっつもドリアじゃ飽きるでしょ?今日は和食にしてあげる。その前に掃除ね。」
「…俺なりに掃除はしたつもりなんだけど。」
「これが?」
麻子は中島の部屋を見渡すと呆れた顔をしてしまった。
「これで掃除したつもりなら、さっきまではもっと酷かったのね。さっ、手伝って。とりあえず
カップ麺の空箱とか雑誌とかはまとめて頂戴。それぐらいは出来るでしょ?」
以前、麻子が掃除して綺麗な部屋にするまで1時間はかかってしまった。
「本当に優人さんの爪の垢でも飲ませたいわ。毎日、掃除機位しなさいよ。」
「そんな暇ね~よ。」
「渡部さんからさっき電話があったわ。しばらくあなたは午後出勤だけか、午前中だけにするって。
時間はたっぷりあるでしょ。」
「渡部さんから電話があったのか?」
「えぇ、あなたの事心配してたわ。顔色も悪かったって。大丈夫?」
「…。」
「ちゃんと薬、水で飲んでる?」
「飲んでるよ。」
麻子は会話をしながら料理の手を休めずに中島の様子を見た。
彼女の目には中島が元気がない様にしか見えなかった。