Tomorrow is another day 第2章 60話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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五十嵐医師から話を聞くまえに、中島が救急搬送されて、


入院したのを中島の会社に連絡しなくてはならなかった。


このまま無断出勤を続けていたら、首になってしまう。


麻子は以前使っていた名刺に書かれている、昔の会社に電話をした。


「もしもし、お久しぶりです。小林です。」


「あっちゃんか。久しぶりだな。どうしたんだ?また、うちに戻ってくるか?」


電話に出たのは取締役の秋口だった。


「今の会社で良くして頂いてますから、それはないです。


ただ・・・。」


「どうした?」


「中島さんが倒れて、今入院してるんです。」


「あいつが?だってこないだまで元気だったぞ。」


「詳しい事は中島さんのプライベートの事ですから、お話出来ませんが、


しばらく入院する事になりそうです。ですから、無断出勤ではなく


有給か、労災の休みにして上げて頂けますか?」


ただごとではないと秋口は理解したのか、今までのくだけた口調ではなくなった。


「病院はどこだ。」


「伊藤総合病院です。」


「なんであっちゃんが、そんな事知ってるんだ。お前達は付き合っていたが、別れただろう。」


「先日、偶然お会いしたんです。」


中島と関係を持ってしまった事など言えない。


「判った。社長に言っとくよ。だけど、命に別状はないのか?」


「1週間程、意識がありませんでしたが、さっき意識は戻りました。」


「今度、様子を見に行くよ。」


「はい。」


そしてまた病室に戻った。


五十嵐医師は先程の看護師の様に声をかけていた。


「中島さん、ここがどこか判りますか?」


「ばぁちゃん家。」


今度は違う場所を答えた。


「ここはですね、伊藤総合病院です。あなたは救急車で運ばれて、1週間意識がなかったんですよ。


お名前は判りますか?」


「堺 雅人。」


またしても、先程と違う答えになる。


「あなたの名前は中島 巧さんですよ。」


そうすると中島は天井を指差して、


「あぁ、ラジオの収録に行かなきゃ。ほら、あそこにスケジュールが書いてある。」


優人達も五十嵐医師も天井を見たが、天井には幾何学模様しか書かれていない。


「じゃぁ、また来ますからゆっくり眠っていて下さいね。」


そう言うと五十嵐医師は病室から出て、優人達を病室から出した。


「どういう訳なんですか?名前も場所も判らないなんて。」


「おそらく、薬の過剰摂取の為の後遺症でしょう。」


「治るんですか?」


「1週間もすれば、薬も抜けてきますから、ご自分が誰かなど判ってきます。」


その言葉を聞いて、二人共少し安堵した。