その頃、自宅にいた麻子は先に食事を済ませ、洗い物をしていた。
手が滑ったのか、優人とおそろいのマグカップを落としてしまい、マグカップは音を立てて
割れてしまった。
「大変。せっかく優人さんとおそろいで買ったのに。」
指を傷つけない様に少しづつ欠片を拾っていたが、小さい欠片で指を切ってしまった。
「つっ。いた~い。」
指からは血が流れていく。その血を見ていると麻子は嫌な予感がした。
時計を見ると11時を回っていた。明日、麻子の両親に会いに行くのだから早く帰って来ると
優人は出際に言っていた。
(遅いわね。何かあったのかしら。)
明日は休みを取っていたので、明後日用の資料をまとめていると優人が帰ってきた。
時間は12時を過ぎていた。
「おかえりなさい。遅かったのね。何かあったの?」
「…。あぁ、麻子さん。…いや何でもないんだ。」
優人は麻子からの視線を避ける様に着替える為、部屋に入ったがすれ違いざま
ボディソープの匂いがした。
一瞬、振り返って優人が入っていった部屋を見てしまう。
(まさか…)
中島との事が思い出される。優人に限ってそんな事はないと思いたかった。
だが、優人の態度といい、ボディソープの香りといい、不審に思う条件はそろっていた。
そして昨日、真亜子があっさり引き下がり、ウェディングドレス選びをしたいと言い出した事も
気になった。
(嘘よね。優人さんに限って…。勘違いよ)
麻子は祈る様な気持ちで優人が入っていった部屋を見ていた。