翌日の真亜子は昨日のうなだれた様子もなかったかの様に元気に仕事をこなしていた。
(よかった。踏ん切りがついてくれたかな)
真亜子の仕事ぶりに優人も一安心していた。
サロンも閉店の時間に近づくと、真亜子が笑顔で優人に話しかけてきた。
「あの、昨日の話ですけど。」
「えっと…。どの話かな?」
「小林さんのウェディングドレスを選ぶ、お手伝いをする事ですよ。」
「あぁ。」
「私、小林さんの好きそうなドレスとか判らないんで、色々ピックアップしてみたんです。」
「もう?ありがとう。」
「それで…、店も閉まりますから良かったら私のうちでドレスのカタログ見てもらえませんか?」
「でも、それは彼女が見て決めた方がいいんじゃないの?」
「店長が選ぶってところがサプライズでいいと思うんです。」
「そんなもんかなぁ。」
長年、今のサロンに勤めていてそんな男性がいなかった事はない。優人自身も興味があったので
真亜子の自宅に行く事にした。
真亜子の自宅はこじんまりとしていたが、若い女性らしく可愛らしい部屋だった。
「じゃぁ、おじゃまします。」
「狭いですけど、どうぞ。今、コーヒー入れますね。」
「いいよ。それより、ドレスのカタログ見せてくれる?」
優人がカタログの場所を探していると、突然真亜子が抱きついてきた。
「ちょ、ちょっと…。」
「ごめんなさい。騙す様な事して。でも一回でいいんです。一回でいいから私を女として
見てくれませんか。これで最後にします。サロンも辞めます。だから…。」
そこまで一気に話すと優人に口づけした。
優人はこの行動に固まってしまった。
それでも真亜子が震えているのが判る。一瞬麻子の笑顔が頭をかすめたが、優人は
ゆっくりと真亜子を抱きしめて真亜子からの口づけを受け入れた。
そして首筋に唇を移す。真亜子が崩れ落ちそうになるのを腰を支えて少しづつボタンを外していく。
真亜子は静かに部屋の電気を消した。