ようやく締め切りも終わり、定時で帰ろうと思っていたら、
夕食の材料がない事に気が付いた。
近所のスーパーで夕食の材料を見ていたら、会うはずがない中島を見かけた。
隣には見覚えのある女性が一緒だった。
(結婚パーティで見た人だ)
そこへ幼稚園位の男の子が中島に駆け寄って行く。
「パパ~。」
「どこ行ってたんだ。心配したじゃないか。ちゃんとママの手を握って歩くんだぞ。」
(子供が産まれたんだ…)
麻子は中島家から気づかれない様にレジに素早く進み精算を済ませ
スーパーを後にした。
せっかく彼に会わない様にと優人が提案してくれたのが仇になってしまった。
うなだれながら、優人と一緒に住む事になったマンションに向かう。
優人はまだ帰ってきておらず、一人で黙々と夕飯を作った。
30分後程して優人が帰宅してきた。
「ただいま。やっぱり、帰った時に部屋に明かりがあるのはいいね。ほっとする。」
「…優人さん。」
「どうしたの?」
「スーパーで中島さんを見かけちゃった。」
「だって、こないだは隣の駅で会ったのに?」
「家はこっちみたい。奧さんと子供さんと一緒だったから。」
「大丈夫?」
「うん。平気。同じ駅でもこの辺はマンションが多いから、今日見かけたのは
たまたまだったのかもしれないし。」
無理やり笑顔を作り、優人に心配をかけない様にした。