翌日、優人と会う約束をしたはずなのに、やっぱり朝涙を流しながら
目が覚めてしまったのもあり、優人と会うのはキャンセルさせてもらう事にした。
出勤前にメールでキャンセルの旨を告げる。
『今日、お会い出来る約束をしていましたが、記事の編集が急遽変更になったので
時間が取れません。申し訳ありません』
『そうですか。残念ですが、お仕事頑張って下さい。でも頑張り過ぎて
身体を壊さないで下さいね』
本当は記事の変更などなかったが、頭から彼の事が離れなかった。
いい加減彼の事は忘れたかった。
でも、あの楽しかった日々の事を忘れる事など出来るだろうか。
過去になればなるほど、過去は美しい思い出になる。
彼と過ごした日々は麻子の体の一部かもしれない。
出勤前に熱いシャワーを浴びて目を覚ます。
いつも5時前に目が覚めてしまうので、正直眠かった。
特に昨日は睡眠薬をいつもの倍飲んでいたから、頭も重かった。
いっその事、今日は有給を取って休んでしまおうかとも思った。
締め切りまでまだ日にちがあったし、資料は全て揃えてある。
しばらく考えてから、編集長に携帯電話で
体調を崩したので休みたいと連絡を入れた。
「大分、徹夜が続いたからね。いいわよ。
でも編集者として体調管理も大切にしなさい。」
「すみません。」
「明日には体調を万全にして出社する事。」
「はい。」
電話を切ると、今日は何も考えたくなくなって、再び睡眠薬を飲んで
ベットに潜り込んだ。
優人からメールが来ても困るので電源も切ってしまった。