それとも、じっと私の家を見つめているのだろうか。
どちらにしても気持ちがいいものではなかった。
美奈はシュレッダーで手紙を粉砕すると鍵を
武に見つからない様に自分の小銭入れにしまった。
数日後、無言電話がかかって来る様になった。
恐らく『彼』だろう。
だが、美奈は『彼』の名前を呼ぶ事もなく黙って電話を切った。
武は、
「何?無言電話?最近多いな。」
「そうね。一応警察に相談してみようかしら。」
電話をかけてる人に覚えはあったが、武にはそう言った。
そして何度目かの無言電話の時に美奈は思い切って聞いてみた。
「浩之なの?」
「やっと答えてくれたな、美奈。手紙は読んでくれたか?
鍵が入っていただろう。」
「こんな脅迫するみたいな事辞めて。貴方とは切れたのよ。
私だって子供もいるんだし…。」
「知ってるよ。香ちゃんだろ。可愛いじゃないか。」
「貴方、香に何したの?香は無事なの!?」
「そう慌てるなよ。何もしてないさ。ただ、監視してるだけさ。
じゃぁ、今日は電話に出てくれたってだけで感謝してるぜ。じゃぁな」
そう言うと電話はプツリと切れた。
香を監視?じゃぁ常に香の登下校を見ている訳だ。
まだ幼稚園だから幼稚園の送迎バスがあって
誘拐などは出来ないとは思うがやはり心配だった。