…ダメだ。彼の頭の中には『結婚』の『け』の字もない。
と、思ったら光がポケットをゴソゴソ探している。
何を探しているのだろうと思って見ていたら、指輪のケースだった。
あぁ、そういえば私、明日が誕生日だっけ。
ぼんやりとそんな事を考えてケースを見ていた。
「うそだよ~ん。ちゃんと考えてたさ。
友梨香が欲しかったのはこれだろ。」
光が指輪のケースを開けるとダイヤのリングが入っていた。
思わず両手で口元を押さえる。
それぐらい大きなダイヤだったのだ。
一般人の私が買える様なダイヤなんかじゃなかった。
何カラットあるんだろう。
紗由理も武内さんもにやにやしながら
私達を見守っていて何も言わなかった。
光は私の左手を取ると薬指にその指輪をはめた。
以前もらったシンプルな指輪もしていたから、
まるですでに結婚しているみたいだった。
「光。これ…。」
「俺が何にも考えてないとでも思う?」
「思う。」
「ひで~な。友梨香がウェディング・ショップとか
何気にぼ~っと見てたの知ってんだぜ。
指輪とかさっ。だから、健に相談して買っておいたんだ。
で、いつ渡そうか、いつ渡そうかって悩んでたわけ。
俺なりに考えてた訳よ。」
光は苦笑しながら教えてくれた。