香を妊娠した時はショックだった。
どちらの子かわからなかったからだ。
だが、妊娠5ヶ月も過ぎる頃、
なんとなく『彼』の子の様な気がしてきた。
お腹を蹴る勢いが夫の子とは思えなかったのだ。
その『彼』の子と直感で判った頃は恐怖でしかなかった。
その頃はすでに『彼』とは切れてたが、
この子が産まれたら『彼』がまた現れるのではないかと
思って毎日が恐ろしかった。
しかし、香が産まれてしまえばそんな恐怖は
どこかへ飛んで行ってしまった。
『今は、この子を守ろう。彼が来ても
夫に嘘が分かってもこの子だけは私が守ろう。』
その時、これだけは心に誓った。