マンションへ帰ると紗由理と武内さんが何か書類に目を通していた。
「ただいま。何してるの?」
「あれ?友梨香ちゃん。早かったね。どうしたの?」
「うん。ちょっとね。紗由理は何してるのよ。」
紗由理が見せたのはなんと婚姻届だった。
「紗由理、結婚するの?
事務所の許可はもらったの?武内さんも。」
「ううん。社長は絶対ダメだって。
でも婚姻届を出しちゃえばこっちのものよ。
まぁ、事後報告って訳ね。」
「呆れてものが言えない…。」
私は冷蔵庫から昼間だったけどビールを取り出し一口飲んだ。
紗由理は婚姻届を私に差し出し、
「ねぇ、結婚するには証人が2人いるの。
光君と友梨香でなってくれない?」
「やぁよ。貴女の事務所の社長に
文句を言われるのは私なんだから。」
責任を逃れようと紗由理から離れた。
すると、紗由理は私に詰め寄り、
「友梨香ちゃん冷た~い。
今まで光君との事で援助したじゃない。」
「交際と結婚は違うわ。
責任の重さが全然違う。家庭を持つのよ。判ってるの?」
その私の説得に武内さんが初めて口を開いた。
「判ってるさ。
紗由理にはこのまま女優業を
続けてもらってもいいと俺は思ってるし、
このままいつまでもこそこそしてるよりいいだろう。」
「武内さんまで…。」
私は2人の意思は堅いと思った。