香。
来年の春には小学生になる、誰の子でもない私の子供。
いや、あの『彼』の子供。
夫は自分の子供とまったく疑っていない様だが、
香が産まれた時にわかってしまった。
こういう事は女の直感で判るものなのだと、
出産を経験して初めて判った。
夫とは結婚以前から婚前交渉はあったし、
その時はまだ『彼』とは切れていなかった。
夫も哀れな男だと思う。
自分の子と疑ってもいない子が他人の子だなんて。
「浮気をするなら隠し通せ」
これが美奈の持論だった。
もちろん夫が浮気をしてもこれを貫いてほしかった。
その方が波風が立たなくて良い。
冷たい考えの様だが実際問題、浮気が発覚した時ほどの修羅場はない。