叫んだ声で光は目を覚ましたが、私は気を失った。
「友梨香!」
私がリビングに倒れ込む前に光か私を抱きとめた。
紗由理は私の叫び声に部屋から
着替えも半分途中の様子で飛び出て来た。
「どうしたの?!」
武内さんは戸惑った様に、
「いや、声をかけたら『来ないで』と叫んで倒れたんだ」
光は台所の包丁を素早く見つけ、
「武内さん、友梨香に包丁を向けて話しかけませんでしたか?」
緊迫した顔で私を抱きかかえたまま聞いた。
武内さんは一瞬ムッとした声で、
「そんなに接近してないぞ。
友梨香ちゃんはリビングだったし、俺は台所にいたぞ。」
「それでも、友梨香にとっては恐怖だったんです、気を失う程。
今日、会社であったある事のせいで…。」
光は私の首筋に顔を埋め強く抱きしめた。
紗由理は、着替えを済ませ、
「やっぱり何かあったのね。」
「なんでわかるんだい?紗由理ちゃん。」
「だって涙の痕があったもの。
強気な友梨香が泣くなんてよっぽどの事があったんでしょ?」
紗由理は光に訳を求めた。