お母さんは光を無視する様に紗由理にだけ話し掛け、
私の子供の頃の話などをしていた。
「友梨香も今はキャリア・ウーマンみたいに振舞っているけど、
子供の頃はおてんばでねぇ。
紗由理ちゃんとよく近所の方に怒られて帰って来てたわよね。
その紗由理ちゃんも実力派女優なんて言われる様になっちゃって。
私も歳を取ったはずだわ。」
「やだ~、おばさん。昔の話は禁物ですよ。
TVではこの私は出してないんだからぁ。」
「そうね。TVでの紗由理ちゃんと、
目の前にいる紗由理ちゃんは大違いですもの。」
母は笑いながら紗由理の肩を叩いた。
会話に入りたかったらしく、光はわざと明るく振る舞い、
「へぇ、友梨香っておてんばだったんだ。今でもその面影はありますけどねぇ。」
会話に入り込もうとした。だが、母は、
「貴方に友梨香の何が判るの?
私は子供の頃から1人で友梨香を育ててきたのよ。」
それに対し、
「僕の母もそうです。僕の両親は僕が幼い頃離婚しましたから…。
僕は父の顔を知りません。僕も母に育ててもらいましたから。」