2人に頭を下げられた形になった母は、少し躊躇した様に、
「しょ、しょうがないわね。1時間だけよ。
言っとくけど江川さんはうちに泊めませんからね。」
「お母さん!」
「だってそうでしょう。
こそこそ人の家にやってきて泊まれるとでも思ってるの?」
「だから、それには訳があるのよ。」
母と私の言い争いにストップをかける様に光が口を挟んできた。
「いいんだ。お母さんの言う通りだよ。
とにかく上杉が来るのを待ってもらおう。」
母は光に『お母さん』と呼ばれた事に過剰反応して、
「貴方に『お母さん』呼ばわりされる覚えはありません。
それとも友梨香とそういう、将来を考えてるの?」
「すみませんでした。とにかく、僕のマネージャーが来るまで待って下さい。
お願いします。」
「それは待ちます。でも話によっては、こちらも考えますからね。わかりました?」
母はキツイ口調で光に宣言した。
「はい。」
スウェット姿だったけれど、光はやっぱりアイドルで芸能人なんだなぁって、
その姿を見て思った。なんと言うか、オーラがあった気がする。
光は本気を出せばちゃんと芸能人なんだな。ちょっと光が遠くに感じた。