「隠れながらお付き合いするなんて、そんなお付き合い辞めてしまいなさい。
もっと堂々としてなさい。それとも、何かやましい事でもあるの?」
「…。」
母に一般人と芸能人が付き合うのが、どんなに大変か判ってもらえるだろうか。
こんな田舎に1人で住んでいる人にはきっと判ってもらえないだろうな。
私が黙り込んでいると光は何を思ったのか携帯で電話をし始めた。
この修羅場に携帯?何考えてるのよ。
『あぁ、上杉?夜遅くにわりぃ。
今から俺の家に行って一番いいスーツ持って来て。
場所はGPSをONにしてるから判るだろ。ネクタイもシンプルなのやつ頼むな。
うちに寄ってからだと高速使ってだったら1時間で着くだろ。
あぁ、訳はこっちに来てから話す。あぁ。頼んだぞ。』
電話を切るとおもむろに母の方を向いて、
「1時間程、時間を頂けますか。友梨香さんとの事も僕との事も全部、お話します。
お願いします」
光は頭を下げ、そのまま動かなかった。
私は光が敬語を話せるなんて思ってもいなかったが、
光が頭を下げてるので私からも、
「お母さん、お願い。時間を頂戴。そうしたらちゃんと説明するから。」