私達は龍雄さんが来るまで、食事をしながら待つ事にした。
さりげなく、友梨香ちゃんが光君にサラダとかわけてあげてたのが意外だった。
友梨香ちゃんはそんな事、男の人にする人じゃないし…。
上手くいってるんだなぁ。食事が終わった頃、龍雄さんがやってきた。
急いでやってきたみたいで、リビングのソファに座るなり水を求めてきた。
「紗由理、とにかく水1杯くれないか。」
私は慌てて冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し彼に渡した。
「紗由理。結局妊娠してたのか?俺は父親になるのか?」
彼の顔は不安と希望の半々に別れていて、
私は最初の結果を言いにくかった。
「言いにくいけど…、妊娠してなかったの。」
「…そうか。父親になれるかと思ったんだけどなぁ。まっ、複雑な気分だ。」
そう言うと今日はバイクで来たからと、ミネラルウォーターを
ガブガブと飲みほした。私は人騒がせさせて、
申し訳ない気分がどんどんとこみ上げてきた。
嫌な沈黙が流れそうになった時、光君が明るく、
「まっ、何にもなかったって事で良かったじゃないですか。」
「アンタは黙ってなさい。」
「友梨香ちゃん、俺が黙るといや~な沈黙が続くだけだよ?
そこをなんとかしようって思ってるだけじゃん。」
「光君、ありがとね。そうだよね。何事もなくて良かったかもしれないね。
私は女優業を続けたいし、
龍雄さんと結婚の話なんて出てなかったから…、出てなかったから。」
私はそこまで言うと言葉が出なくなった。
そう。結婚話が一度も出てなかったのが辛かった。
かと言って、簡単に結婚出来る様な世界で私は仕事をしてないし。
私の気持ちを察してか、龍雄さんが黙って肩を引き寄せてくれた。