OLと女優 54  | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

私達は龍雄さんが来るまで、食事をしながら待つ事にした。


さりげなく、友梨香ちゃんが光君にサラダとかわけてあげてたのが意外だった。


友梨香ちゃんはそんな事、男の人にする人じゃないし…。


上手くいってるんだなぁ。食事が終わった頃、龍雄さんがやってきた。


急いでやってきたみたいで、リビングのソファに座るなり水を求めてきた。


「紗由理、とにかく水1杯くれないか。」


私は慌てて冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し彼に渡した。


「紗由理。結局妊娠してたのか?俺は父親になるのか?」


彼の顔は不安と希望の半々に別れていて、


私は最初の結果を言いにくかった。


「言いにくいけど…、妊娠してなかったの。」


「…そうか。父親になれるかと思ったんだけどなぁ。まっ、複雑な気分だ。」


そう言うと今日はバイクで来たからと、ミネラルウォーターを


ガブガブと飲みほした。私は人騒がせさせて、


申し訳ない気分がどんどんとこみ上げてきた。


嫌な沈黙が流れそうになった時、光君が明るく、


「まっ、何にもなかったって事で良かったじゃないですか。」


「アンタは黙ってなさい。」


「友梨香ちゃん、俺が黙るといや~な沈黙が続くだけだよ?


そこをなんとかしようって思ってるだけじゃん。」


「光君、ありがとね。そうだよね。何事もなくて良かったかもしれないね。


私は女優業を続けたいし、


龍雄さんと結婚の話なんて出てなかったから…、出てなかったから。」


私はそこまで言うと言葉が出なくなった。


そう。結婚話が一度も出てなかったのが辛かった。


かと言って、簡単に結婚出来る様な世界で私は仕事をしてないし。


私の気持ちを察してか、龍雄さんが黙って肩を引き寄せてくれた。