OLと女優 43 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

紗由理は両手を挙げて、


「ブラボー!これで2カップル成立ね。」


踊り始めんばかりだった。


「待ってよ。まだ、私も気持ちに整理がついてないの。」


「何よ。今『好きみたい』って言ったじゃない。今さら…。」


「面と向かっては言えないと…思う。ほら、私、天邪鬼じゃない?


だから思ってもない事をベラベラ言っちゃうと思うのよね。


って言うか、あいつ…」


「『あいつ』じゃなくて『光』」


紗由理は目を閉じて私の両手を固く握りつぶやいた。


「それに、光君はそんな天邪鬼な所も好きなんじゃないの?


多分そうだと思うけどなぁ。光君らしいって言えばそうだし。


そういう風にあたふたする友梨香ちゃんが可愛いんだよ、光君にとってはね。」


さすが、色んなドラマでヒロインを演じてる女優の紗由理は違う。


私が思いもしなかった事まで言ってくる。


翌日、紗由理が言った事と私が自覚した光への想いでなかなか


仕事がはかどらなかった。


26歳にして部長の地位を獲得している私なのに


部長としてはあるまじき失敗をしたり、


喫煙所でぼ~っと考えこんだりして部下から、


「部長、体調でも悪いんですか?」


なんて心配させちゃった。中には鋭い娘もいて、


「部長、彼氏でも出来たんですか?」


なんて聞いてきた。


『彼氏!!


あぁ、光が彼氏になるなんて考えられない。


だって光は国民的アイドルのBLUE MOONのメンバーなんだから。


私みたいな一般人には縁がないはずなのよ。


たまたま、同居人が女優だっただけなのに…。