スェット姿で片手にビール缶を持ってる状態で私と雄二君は初対面した。
私は慌ててビール缶をテーブルに置いて、首に巻いていたタオルも外して、
今の姿で出来るだけの正装で、雄二君に挨拶した。
「あ、あっ、デビューした頃からファンでした。
あ、あの、雄二君のダンスとか凄くかっこいいと思います。握手して下さい。」
私は顔を真っ赤にして手を指し延べた。すると、
「君の事は光からよく聞いてるよ。光の彼女なんだってね。
だめだよ、浮気しちゃ。」
優しく握手をしてくれて、武内さん達の元へ歩み寄って行った。
取り残された私は握手された手の形のまま立ち尽くし、
しばらくかかしの様に立っていた。
その様子に気が付いた、紗由理がスキップで歩み寄って来て、
「念願の雄二君に会えて感動しちゃった?」
なんて、笑いながら聞いてきた。
私は紗由理には江川さんにと恋人と思われてるのが
嫌なのが分かって欲しかったのに、
それが分かってもらってなっかった事が悲しかった。
「ありがとね。雄二君、呼んでくれて。握手までしてもらっちゃった。
私、お風呂にも入ったし、部屋にいるね。おやすみ。」
私は涙を見せまいと部屋に素早く入り込み、
ベットに飛び込むと、枕に顔を押し付けて声を殺して肩だけを震わせた。
どんどん、私の気持ちに反して、私はあいつの恋人になっていく。
誰か、私の気持ちに気付いて…。