「とにかく、メイク落としてきなよ。すぐ、メイク落とした方が肌にいいし。」
「ううん。龍雄さんが会いに来てくれるの。すっぴんって訳にはいかないでしょ。」
「こんな時間に?」
「こんな時間だからこそだよ。
芸能記者がどこに潜んでいるかわからないでしょ。
私もジャージのままマンションに入ったし、
まさか佐々倉 紗由理がここに住んでるなんて思ってないでしょ。
それに、さっきは友梨香ちゃんと腕を組んでエントランスをくぐったんだから、
尚更一般人に見えるよ。」
「今日、武内さん来るんだ。」
「うん。渡辺さんが私の楽屋に乗り込んで来た事をどこかで知ったらしくってね、
謝りに来るの。龍雄さんが謝る事じゃないのにね。」
「ううん。これは武内さんが謝る事よ。
元カノに今の彼女の事を話したら
今の彼女に文句を言いに行くに決まってるじゃない。
それを理解してなかった武内さんは紗由理に謝るべきよ。」
私は何故かフツフツと怒りが湧いて来て飲み干したビールの缶を握り潰した。