山崎が作ったコーヒーカップは卒業旅行から帰ってきてから1週間後に学校に
届けられた
そのコーヒーカップは手にすっぽりと入る大きさで
ベージュ色にも似た色をしていた
立派に桐の箱に入れられて届けられ山崎は大事そうにそれを受け取った
「それ、福島に送ってやるんだろ?」
「はい」
山崎は頬を赤らめながら、頷いた
「さてと…もうそろそろ進路を決めなきゃいけないんだけどなぁ。山崎だけなんだよ
進路がはっきりしてないの」
「…すみません」
「まぁいいや。お母さんと今日1日話合って、明日までに決めて来る事」
「明日までにですか?!」
「お前なぁ、この時期がなんだと思ってるんだ?もう進路を決める時期だぞ
今日でも遅い位だ」
「…はい」
さっき、萩焼のコーヒーカップを受け取った時と違った、テンションの下がった声で
うつむき、萩焼の箱を抱き締めうなづいた
山崎は家に帰ると母親に福島のいる県外で就職したい旨を伝えた
それを聞いた母親は料理する手を止め
「浩二さんだけじゃなく、あすかちゃんまで私を見捨てるの?」
包丁を片手に振り向いた
「見捨てる訳じゃない!私には私の人生があるの。たまに帰ってくるから、お願い!」
しばらく、呆然と山崎を見つめていた母親は悟った様に
「そうね…あすかちゃんにもあすかちゃんの人生があるものね
福島君も今時にいない良い子だし…お母さんもしっかりしなきゃ」
「ごめんなさい」
「謝る事ないじゃない。貴女は貴女の生きたい様に生きなさい」
こうして翌日、僕は山崎が福島の元へ旅立つ事を知らされた