卒業  41話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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山崎の涙ながらの告白に、僕らは彼女の瞳の奧にある闇を感じた様な気がした


父親が愛人を作る度に『俺の女だ』なんて紹介されたら


普通だったら非行に走るか自室にこもるかのどちらかだろう


だが、彼女は、その怒りを自分自身に向けた


その訳が「同じ血が流れているのが嫌だから」


少し病的考えだが、わからなくもない


僕も教師という職業になる時、同僚と同じ「先生」にはなりたくはなかったからだ


生徒と同じ目線で物事を見れる教師になりたかった


その葛藤は初めての学校からずっと続いていた


だから、どう見ても生徒が悪い事をしても生徒の味方になったし


あえて、生徒とはしゃいだ


僕と山崎は似ているんだ…


冬のポスター撮影も終わり1年間の銀行のイメージキャラクターの役目は終わった


冬のポスターは純白の衣装に純白のマフラーと手袋をしていて


まるで天使の様だった


ポスターに羽が生えてないのが不思議な位だった


もうポスターの仕事をしないのかと思うと


(もったいないなぁ)


僕は銀行前で大きなそのポスターを見上げた


福島と山崎は2人っきりの時間を短かったが、濃縮な幸せな時間を過ごしたらしい


山崎の母親にも福島は挨拶し、2人は母親からは公認の仲になった


なにより、福島の人柄が母親の気に入ったらしい


だが3学期の後半で卒業旅行がある時は頑なに拒否をした


やはり、2年生の頃の思い出が行く事に拒否反応を示すのだろう


僕と安倍先生と2人で説得に当たったが


「嫌です。同部屋になる娘とどんな話をしたらいい、かわからないし


2年生の時みたいになったら嫌だし」


「でも、今は2年生みたくみんな意地悪をしないだろ?」


「…でも」


「『でも』なんだい?」


「内心はわからないし…」


どうやら、1年近く経っても山崎はクラスメートに心を開いてない様だった


それもそうだろう


約2年間、嫌がらせにあっていたのだから…


「それに…」


「それに?」


「それに聞いちゃったんです。女子が私の銀行のポスター観て


『良い気になってる』って笑ってたんです」


「そんなの一部じゃないか」


「でも、その人達と同じ部屋になったら、何言われるかわからないし…」


一部の女子が今だにそんな事を言っているなんて、僕は知らなかった


やはり、山崎のいじめは根深いということか…




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