日銀は米国QE3と併せた格好で資産買入れ基金を70兆円から80兆円規模に拡大する事を決定しました。決定後は円安に振れたものの、その後は寧ろ発表前よりも円高が進行。円はドルだけではなく他の主要通貨に対しても上昇するなど予想し辛い展開が続きます。FOMCでQE3が打ち出された時も同様な動きがみられました。ドルは発表直後売りが強まったものの、その後は一貫してドル高が続きました。追加緩和はその国の通貨に対し下落するといったこれまでのパターンに変化がみられます。金利相場であれば金利差からの資金の移動が強まります。しかし、これだけ主要国通貨の金利が低下してくると金利差よりもその国の景気への影響やリスクが市場に影響を与えているようです。ECBの追加緩和はまさにその動きを現すものでした。ECBが無制限の国債購入実施を示したことで欧州債務不安が後退しユーロは上昇が加速。しかし、依然として金利相場の名残もあることから市場の動きは一定せず、センチメントにより動きが変わりやすくなっています。こうした混沌とした動きも落ち着いて来れば、最終的にリスクオンの動きが強まるとみます。日欧米が協調してこれだけの資金を市場に供給すればリスクマネーがいずれ株式市場やコモディティー、そして資源国通貨などに向かうと思われます。今は、大きなイベントが出尽くしたことで各通貨はポジション調整による動きが中心とみられます。特にQE3実施後にはクロス円が大幅に上昇した調整の売りが目立ちます。その調整もそろそろ終盤に近づいてきたとみます。もう一段の調整後には一旦はもみ合いに入る可能性が高いものの、時間調整後に再びクロス円の上昇が始まるとみます。ただし、ユーロやポンドなどの主要通貨は今年の上限に近いことから更なる上昇には何らかの買い材料が必要と思われます。ギリシャやスペインの動向がそのカギを握りそうです。その他の豪ドルやカナダなどの資源国通貨の上昇余力は十分ありそうです。クロス円がしっかりした動きを見せるときはドル円の底が固まった時でもあります。今週は日本の機関投資家など中間決算の最終週となるため外貨売りによる円転が出やすいときですが、既にこれだけの動きがあればほぼ終了しているとみます。
全般でみると日本の経常黒字の縮小や中国との政治経済リスクの高まりなど円高に振れる材料は見当たりません。今週は米国住宅関連の指標が相次ぎます。先週の指標をみると住宅改善の兆しを示すだけに予想を上回るようであればリスクオンの動きが強まりそうです。
ドル円の予想レンジ:79円50銭~77円80銭