先週行われたバーナンキ議長の講演はQE3の可能性を残すものとなりました。そして、今週はその金融政策を大きく左右させる米雇用統計が発表されます。また、今週はもう一つ注目イベントであるECB理事会が開かれます。スペインやイタリアなどソブリンリスクの高まりを抑えるための追加緩和措置への期待が高まるなど、今週は今後の相場の方向性を占う重要な週となりそうです。
バーナンキ議長は講演ではこれまでの議会証言などの内容を踏襲するもので、具体的な追加緩和の時期や実施のタイミングなどの言及はありませんでした。しかし、失業は深刻な懸念材料であり長期的目安より2ポイント高く、満足いく状態からかけ離れているといった認識を示しました。発言の中で「非伝統的な政策は管理可能」と付け加えたことなどもQE3も含めた追加緩和への期待を高めることとなりました。特に、前週のFOMC議事録公開でQE3期待が高まり始めていただけに市場の期待に拍車をかけた格好となりました。講演では労働市場の改善ペースへの懸念を強く示したことで今週の雇用統計はFOMCでの決定に大きく影響を及ぼすことになるでしょう。しかし、QE3で本当に雇用改善ペースを高めることができるのか疑問も残ります。既にQE1・QE2と既に大規模な追加緩和を実施したにもかかわらず失業率が依然として高止まりしていることも事実。もしQE3を実施してもその効果はこれまでと同様の結果にとどまるとも解釈できます。昨年のジャクソンホールでの講演でもやはりQE3には言及せずFOMCの会合が追加緩和協議で二日間に延長。講演後の雇用統計では7.5万人増の予想に対し結果はゼロとなったもののQE3は実施されませんでした。バーナンキ議長はこれまでもQE3の可能性をちらつかせることで市場をけん制。市場の期待と議長の実際の行動とは温度差があるのかもしれません。
いずれにしても、市場は既にQE3への期待が先行し長期金利が低下しドル安が進んでいます。
雇用者数は4-6月期よりも住宅や消費などによる非製造業などの雇用回復基調がみられます。7月の雇用者数増加など既にその兆候が出始めており、8月も非農業部門雇用者数も大きく下振れするリスクは低いとみます。今週はADP雇用統計や新規失業保険申請件数が雇用統計間に発表され、思惑から荒っぽい動きも予想されます。
ECB理事会では0.25%の利下げが予想されますが、市場はそれよりも南欧国債買い取りの是非が焦点となります。国債買い入れ目安となる利回り幅の協議に注目。しかし、ドラギ総裁は9月12日のドイツ連邦裁判で合憲と判断されるまで持ち越すとしていることから、市場への影響も限定的とみられます。いずれにしても、市場は欧米中銀の追加緩和姿勢への期待が高まる中で、失望感が高まる内容であった場合の反応に特に注意しておく必要がありそうです。
ドル円の予想レンジ:80円00銭~77円60銭