先週は日米の金融政策の微妙な違いを背景にドル高円安の流れが加速しました。
バーナンキ議長はFOMC会合後の記者会見でこれまでの景気判断をやや強めの見通しに上方修正した事で市場のQE3への期待は後退しました。失業率が目に見えて低下するなど労働市場の改善や石油価格の上昇による一時的なインフレ懸念を指摘。これらの内容は先月末の議会証言の内容を踏襲するものでした。しかし、市場ではQE3への期待が予想以上に大きかった事もありドル買いに弾みがつきました。
また、同日行われた日銀政策会合での白川総裁の記者会見では引き続き強力にデフレ脱却を目指す事を改めて示した事で円安が進みました。米国のこれまでの異常な低金利政策のやや調整の動きに対し、日銀が更に緩和傾向を示した事で日米長短金利差はここにきて拡大したこともドル円の買いが強まる要因となりました。ドル円は昨年4月以来の高値である84円台前半まで上昇し、クロス円でも全般に円安の動きが強まるなどリスク選考の動きが強まりました。ドル円下落の三大要素でもある米国超低金利政策とユーロ危機、そして日本の貿易黒字がそれぞれここにきて変化を見せ始めました。また、市場には余剰資金のだぶつきが目立ちます。米国のQE1,QE2といった大規模資金供給に対し欧州でもECBがこの数カ月の間に1兆ユーロ余りの3年物資金供給を実施しました。また、日本も遅ればせながら10兆円の追加緩和を実施し消費者物価を1%の目途にするインフレターゲットを掲げました。市場の余剰マネーはギリシャデフォルトリスクの後退や米景気回復期待などから少しでもリターンの高い物へと動き始めています。原油などのコモディティーや株式、そして資源国通貨や金利の比較的高い通貨などの上昇がその結果ともいえます。ただし、まだこの動きが本格的に始まったと見るのは尚早かもしれません。ギリシャ問題はひとまず後退してもスペインの財政問題に対する不透明さやポルトガルが債務再編に追い込まれるとの観測も浮上。欧州債務の根本的な問題は解決されているわけではなくいつ又リスクが浮上するか分かりません。米国経済の回復もバーナンキ議長は依然として著しいい下ぶれリスクを引き続き警戒している事を示し、QE3を温存する結果となるなど予断を許しません。しかし、今の市場の強気センチメントはそのリスクを上回るものと考えられます。
今週は米国住宅関連の指標が相次ぎます。1月の数字は予想以上の改善を示した事で景気回復期待が強まりました。今回も継続して堅調に推移するとの観測もあり期待は高まります。一方で、木曜日には日本の2月貿易収支が発表されます。市場は1200億円の赤字になるとの見通しもあり、そうなれば5カ月連続の赤字となり円安が更に進むとの観測が強まります。先週末はドルの上昇スピードに対する調整の動きが見られました。ドル高円安の流れはまだ若く、調整が終われば再び流れに戻るとみています。
円の予想レンジ:85円00銭~82円00銭