沈黙が二人の間を漂う。畑岡が運転している自動車を
後ろから来た車が、次々と追い越す。
「それは‥一体どういう事ですか?」
「これ以上は言えない。
‥降りてくれ。少ししゃべり過ぎた。連れていく場が
あったんだが、とてもそれどころではなくなった。」
畑岡は、車を止めて、健二を降ろし去っていった。
あっという間の出来事に、健二は降ろされた後も呆然としていた。
今の話が本当だとすると‥、畑岡に組織に入るよう進めた人物は
誰なんだ?それに一つ重大な事実が解った。
美紀さんが死んで困っていたのは組織だったという事だ。
あの話を聞いた当初は、畑岡の個人的な想いからか
と感じたが、どうやらそうではないらしい。
組織が困るという事は当然、フィリアも望んでいなかった事になる。
それは正しいのだろうか‥。もう一度話をしたいが、今電話は繋がる状態ではない。
他に誰か宛てのある人物はいないか‥。
仕方ない、駄目元で行ってみるか。
健二は、タクシーを拾って、行き先を告げた。
「西警察署へ」
タクシーに乗っている間、健二は中川はいるか電話をかけた。
帰っているかと半分、諦めの気持ちだったが、開口一番、その気持ちは
消し去られた。
いつの間にか深夜料金となるくらいまで夜は更けていた。
タクシーが警察署に着くのと同時に、一人の男が入り口付近から現れた。
「こんな夜更けに君みたいな未成年が何をやっているのかねぇ?」
中川は、声のトーンを幾らか落として声を掛けた。
「大事な話があります。」
真剣な眼差しとこの夜更けに訪れている健二に対して、只ならぬ何かを
感じたか、中川は車を出してファミレスまで向かった。
「全く、普段は注意しなければいけない役まわりが、今は逆じゃないか。」
中川は、自問自答した。
席に着き、二人はホットコーヒーを注文した。
「それで、大事な話と言うのは?」
「美紀さんの兄弟についてです。」