「兄弟?」
中川の眼から少しがっかりした印象を受けた。
「はい、実は美紀さんの死は望まれて起きたものではないのです。
美紀さんが死なれた事に寄って被害を受けた人物がいる。」
「それが、兄弟だろ?言ったじゃないか。この前」
「そうなんです。そこで、中川さん。お願いします。教えて下さい。
名前を。その美紀さんと血を分けた兄弟の名を。」
「それは、あっさりとこの人物だよと言える程、簡単な事ではないんだよ
赤の他人に。大人の事情というものも絡んでくるからね」
「お願いします。もう少しで大きな収穫がありそうなんです。兄を救える
大きな手がかりなんです!」
中川は、少し圧倒されたようだがすぐに平静を取り戻していた。
「なぜ、君はそこまで拘る?別に良いじゃないか。そこまで頑張らなくても。
無期懲役にでもなるもんでもないし。」
「もし、教えないというのなら強行手段に出ます。」
「ほう、どんな?言っとくが私が警察だという事を忘れずにね」
そういうと健二は、スプーン、フォークと共に陳列されたナイフを
取り出し、首元に当てた。
「今、言わないというのなら、僕はここで死にます。」
流石にこれは、中川の動揺を誘ったようだ。
「おい、待て!ったく、何やってんだよ。俺が悪い奴にみえんじゃねーか。
わかったよ、そこまで、腹決めてんなら教えてやる。」
中川は、胸ポケットから一枚の紙を取り出し、そこに名前を書いた。
これが、亡くなった美紀の腹違いの弟だ。
そういうと、中川は、紙を健二の前に放った。
健二は、名前を見た。
佐田拓海‥。
これで、分かってきた‥。
一番の悲しみを背負ったのは
あの人なのかもしれない‥。