美紀と佐田拓海‥二人は血が繋がっている。


拓海を救う為に美紀が必要だった‥か。


となると少し分からない事があるな。なぜだ。


どうして、美紀の母親の方は、許したんだ?


自分の子を犠牲にしてまで、救おうと思えるのだろうか?


‥死なせたくないという行動がとられたのは決定的だが‥。


駄目だ。今日は、家に帰って次の日の夜に父親に会いに行くしかない‥。



中川に家まで送ってもらい、健二はすぐに眠りに着いた。




 

 起きると、もう昼だった。最近の健二の生活は不規則極まりない。


高校を留年しないようにそろそろ足を向けなければいけないのだが、


この一連の問題が解決するまでは、どうしてもじっとしていられない。


流石に兄が捕らわれの身になっているのだから、当然といえば当然だが。



夕方、健二は美紀の父親に電話をかけた。しかし、留守電だ。


健二は、すぐに連絡をくれるよう、留守電に入れといた。



健二は、その間に兄の部屋を訪れた。


今まで兄の部屋に無断で入った事はない。


入る意味を持たなかったからかもしれないが。


だが、今回はなぜか足が自然と向かっていた。


中には、兄が使っていたグローブ、バット等が乱雑に置かれている。


それを見て、健二は少し切なくなってきた。


なぜ兄がこんな目に遭っているんだと‥。


健二は、周りを見渡すと、ベットの上に兄らしくないものを見つけた。


これは‥?なんだ?四葉の形の‥ピアスか?



その時、電話が鳴り、健二はピアスを元の場所に戻して部屋を後にした。




「もしもし、私だが。どうした?」



「美紀さんと拓海さんの事でお話があります。」



間髪いれずに話した為なのか、動揺して言葉が出ないのか分からないが


しばらく返事がなかった。



「‥今から、Sホテルに来なさい。また連絡するから。」



「わかりました」



しばらくして、折り返し電話があった。部屋は2809室。


どれだけ金を持っているんだこの男は、と健二は思った。




「失礼します」


健二はフロントから鍵を渡され、部屋に入った。



「もう君には何を隠しても無駄みたいだな。兄を救おうとする度胸と


力に、私は完敗だ」



ソファに座った健二は、広すぎる部屋に戸惑いつつも、冷静に話を聞く


構えを見せた。



「美紀を死なせてしまった事は本当に悲しい気持ちでいっぱいだ。


だが、私には拓海という子を救わなければならなかった。拓海は美紀の血でないと


直らない病だったんだ。しかし、その事を肝心の美紀に話すのが遅すぎた‥。


俺は嫌われていたから、母親の方に任せていたんだがな‥。まぁ、嫌われても


当然の事をしてきたから、これも今思えば、自業自得だと思う。」



健二は黙って頷いていた。



「しかしあの日は‥明らかに妻‥いや美紀の母親の様子がおかしかった。


何か知らないが、言葉の節々に棘があった。普段では到底言いそうもない


ような事をすんなりと言ってきたりしたからな‥。これでも分かるんだ。


一応結婚していたから‥。結果的に美紀を呼び寄せていた事を君の兄と俺に


言わずに私達に美紀の心に触れる重大な事を話させ、


母親が最後に突き離すような言葉を投げた‥。あれは流石にひどかったよ」



刑事に一通りの事を聞いていたが、これ程までとは聞いていなかったので


健二は驚いた。



「それで美紀さんは‥」



「あぁ、そういう事だ。」



何かひっかかる‥。まだ靄が取れていない‥。



「美紀さんの母親と、拓海さんは面識はあったんですか?」



「いや、向こうは嫌がっていたから直では会ってないな」



やはりそうだ‥。どう考えてもおかしい‥。なぜ、救う気になるんだ?



「では、どうして美紀さんの母親は、拓海さんを救おうと


思ったんですかね?直に会った事もなく我が子を犠牲にしてまで‥」



「それは、美紀の母親自身の口から聞いてみた方が良いが、俺が話そう。


もう、育てる事にうんざりしたんだそうだ。俺にも罪はあるんだが。それで


少し言葉は汚いが、お金という物と絡んでその件は完全に丸く収まっていた」



‥最悪な親だな‥



その時、ドアがノックされた。



「ん?誰だ‥?こんな時間に。


しかもここにいる事は俺らしか知らないはずだよな?」



そう言いながら、父親はドアを開けた。





健二は除き見ると父親は、銃口を向けられていた。




「今から、こちらまで来てもらいますよ。お二人さん」




健二は、その声に聞き憶えがあった。




そいつはワイスと呼ばれていた男だった‥。