地元の友だち・ヨーコに誘われて
ヨーコがバイトしているキャバクラに着いていった。
あんまり乗り気じゃないわたしだったけど、
「面接なんだからエロカッコいい服着てきてね」
ヨーコは倖田來未が好きだったから
なにかというとすぐ「エロカッコいい」と言うのが口癖だった。
彼女が言うエロカッコいいってどんなのなんだろ?
もともとが地味なわたしにはエロカッコいいがわからなかった。。。
ネットで倖田來未の画像とかを探してみても
それはステージ衣装とかだから
自分が持ってる服にはそんな要素はこれっぽっちもなかった・・・
なんとかがんばってワンピに見せブラして
タイトっぽいミニスカートで待ち合わせ場所に行った。
Tシャツ短パンで足をだらしなくしているヨーコはケータイをイジっていた。
声をかけると、スケベオヤジみたいに上から下までなめるような目線で
わたしのことを眺めていた。
「…うん、まあイイんじゃないかな」
中学生♂みたいなカッコしたおまえに言われたくないわ!!
と思いながらも、ヨーコに着いていくわたし。
駅前でタクシーに乗ってお店へ向かう。
なんでもここからふたつ先の駅にお店はあるらしい。
電車に乗っても10分くらい。
なんでタクシーなの?と聞くと
「えっ?べつに・・・」
会ったときからダルそうなヨーコ。
ふだん話すときと全然違うヨーコ。
ひたすらケータイをイジってガムをかみつづけているヨーコ。
会話がつづかないなか、あっという間にお店に着いた。
「今日は特別だからね」
ヨーコがタクシー代を払ってくれたけど
電車に乗ればそんなお金もかからなかったのにと思った。
高校時代によく来た繁華街。
駅から徒歩1分以内の場所が知らないうちにこんなキャバクラでいっぱいだったなんて・・・
「おはようございま~す!涼華です、友だち連れてきました~!!」
タクシーのなかとは違ういつもの軽いノリのヨーコが出てきた。
わたしは思わず戸惑ってしまい、「えっ・・・え~っ・・・??」と彼女を見つめてしまっていた。。。
「涼香さん、おはようございます。えっと…あ、彼女ですね。じゃあこっちに」
ロン毛を束ねた色黒の♂に
大きくて真っ赤なソファのある場所へ通されると
「マネージャーのヨコモリです」
名刺をわたされた瞬間、ニヤッと笑顔を送られた。。。
笑いそうになってしまったけど、なんとかおさえてソファに座った。
「ん~全体的に地味だねぇ」
えっ、いきなり言うかコイツ・・・
「でもさ、お店ではいつもの自分じゃない自分になれるから
これくらい地味なほうがギャップがあってイイんだよね」
またニヤッと笑顔。。。
下を向いて笑いをこらえるのと同時にキモッと心の中でつぶやいた。
「りんごちゃんだっけ? メガネとってもらえるかな?」
最初のカレと別れてからメガネに戻していたわたし。
死んじゃった元カレはメガネかわいいねって言ってくれたから
今もずっとメガネのまんまだった。
言われるままに取ったわたし。
「・・・超ギャップだよね!!!」とヨコモリ。
いいじゃん涼華さん!サイコーじゃん!!
でしょ?コイツ、マジでサイコーでしょ!!
ヨコモリとこのお店では涼華のヨーコが盛り上がっていた。
「そうだなあ・・・このギャップがサイコーだから・・・
りんごちゃんは今日から姫華(ひめか)でいこう!!」
ギャップだから姫華という名前なのはよくわかんないけど、
わたしはこのお店で姫華という名前になった。
わたし、まだ働くって決めたわけじゃないんですけど・・・
「まあまあ、とりあえずドレスが何着かあるからそこから選んでよ。
ちょうど『タイニュウ』あるから、このままやってみない?」
『タイニュウ』 なんのこと? え、わたしどうなっちゃうの??
タイニュウ→体入→体験入店のことなんだけど
そのころのわたしは何も知らないし
やるって言ってないのに、その日に体験入店の枠があるからって
わたしの気持ちも聞かれないまま、わたしはお店に出ることになってしまった。。。
その日からわたしは【姫華】として
もうひとつの人生を送ることになった。