日本の好きなところは?
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(デイリー新潮)
連続ドラマのコア視聴率(13~49歳の個人視聴率)はほとんどが2~3%台だが、唯一4%を軽く超え、トップを独走している作品がある。
嵐の櫻井翔(41)が主演する日本テレビ「大病院占拠」(土曜22時)である。
昨秋ドラマのヒット作「silent」(フジテレビ)に匹敵するコア視聴率を記録している。
なぜ、40代以下に人気なのか?
「大病院占拠」は、神奈川県内にある界星堂病院を占拠した武装集団・百鬼夜行の10人と、警部補の武蔵三郎(櫻井)ら同県警との戦いが描かれている。
この現実離れした設定を聞いただけで脱落した人もいただろうが、40代以下に断トツの人気があるだけに、観てみると面白い。
良く出来ている。
色違いの鬼の面を被った百鬼夜行は医師らを人質にして病院に立てこもっている。
病院を包囲する県警に向けて時に機関銃を乱射。爆弾も爆破させる。
一方、県警側は人質解放の交渉を進めている。対するSAT(特殊部隊)が鬼の狙撃を図ったり、病院内へ突入したりすることを目論んでいる。
両者の対決はほぼ切れ目なく繰り広げられる。そのうえ、放送中は絶え間なくゲーム音楽のようなBGMが流れており、映像処理も派手であることから、観ていると、バトルゲームを眺めているような感覚になる。
それでいて英国ミステリー作家のアガサ・クリスティによる名作『そして誰もいなくなった』(1939年)の要素も採り入れられている。
この小説では過去に直接的、間接的に殺人を犯した10人が孤島に閉じ込められ、謎の犯人によって次々と殺害される。
外界との往来が断たれた場所で物語が進行する「クローズド・サークル小説」の先駆けだった。
「大病院占拠」もクローズド・サークル作品の一種。
こちらは人質に過去の罪を認めさせようとしている。
否定したら、銃殺が待っている。
もっとも、罪を認め、命拾いしようが、社会的な死が待つ。
✳40代に合うテンポの良さ
第2話では人質の1人で病院の清掃員・岩代晋平(小林リュージュ[33])が、女子小学生暴行での服役歴を鬼によって暴露され、さらに今も犯行を重ねていることを認めさせられた。
それによって岩代は命が助かり、解放されたものの、社会的生命はほぼ絶たれた。
人質の言動、鬼と県警の交渉は、鬼たちが用意した動画配信サイトを通じて10万人に観られているからだ。
公開処刑である。
県警の情報分析官・志摩蓮司(ぐんぴぃ[32])が岩代について「死んだも同然だな」とつぶやいたが、その通りなのだ。
やはり人質で呼吸器内科医の土佐大輔(笠原秀幸[39])も第3話で罪を認めさせられた。
公開処刑された。
クラブで違法ドラッグパーティを催した上、過剰摂取で死んだ参加者の死因を心筋梗塞で処理していた件である。
土佐は院長の秘書で愛人の石見カナ(中村映里子[34])が殺した感染症専門医・甲斐正美(西原亜希[35])の死因も偽装していた。
罪を犯した者が、謎の犯人によって相次いで裁かれる。
この古典的かつ王道の筋書きを斬新な設定で見せている。
うまい。おまけにテンポがやたら速く、ノンストップで物語が進む。
スローテンポのドラマを早送りで観てしまう人もいるという40代以下には合っている。
映像に目を向けると、最新のCGなどが多用されている一方、旧作の名場面を思わせる部分がある。
やはり古典の良いところを採り入れている。
第2話で、武蔵の妻で心臓外科医の裕子(比嘉愛未[36])が、病院3階から転落しそうになった。
その時、武蔵は片腕で裕子を掴み、救い上げた。
武蔵を見上げた裕子の顔は恐怖と苦痛で歪んでいた。
スリルのある場面だった。
この場面を観てアルフレッド・ヒッチコック監督による名作「逃走迷路」(1942年)のクライマックスを想起した人は少なくないはず。
無実の罪を着せられていた男が、米ニューヨークの自由の女神像の展望台から転落しそうになった真犯人を片腕で掴んだ。
構図が酷似していた。
最近ではほとんど見られなくなった構図であるものの、後進の監督たちに影響を与えた名場面だ。
CGなど最新技術を駆使している映像の中に組み込むと、新鮮に映る。
ヒッチコック作品を知らない若い世代には特にそうなのではないか。
若い視聴者の間では「鬼の面を被った武装集団は誰が演じているのか」という予想も盛んだ。物語そのものの推理以外に考察する要素を入れたのは技あり。
面白い発想にほかならない。
リアリティはほとんどない。
例えば主人公の武蔵は爆風も熱風も不思議とへっちゃらだし、3階から落ちても軽傷で済んだ。下が植垣だったからだそうだ。
武蔵の口グセは「ウソだろ」であり、絶体絶命のピンチに立たされると口にする。
武蔵がなぜか不死身なので、視聴者のほうこそ「ウソだろ」と口にしたくなるのだが、先に言われてしまう。
もっとも、設定からして真実味の乏しい作品の場合、最初からリアリティを求められていないから得である。
また、観る側が現実に戻らない魔法が脚本によってかけられている。
ゲーム感覚にしているところだ。ゲームで遊んでいる時は現実を忘れるのと同じである。
✳予想されるオチは…
最終的には院長・播磨貞治(津田寛治[57])と県知事・長門道江(筒井真理子[62])と県警本部長・備前武(渡部篤郎[54])が黒い秘密を共有する大ワルなのではないか。
おそらく鬼たちの最終ターゲットだろう。
黒い秘密は病院内に隠されているはず。
第2話で鬼同士が「例の場所、見つかったのか」「本当にあんのか」と言葉を交わしていた。
県警本部長・備前は第4話で鬼たちが秘密を知っていることに気づいたように見えた。
直後、急に「いますぐ制圧するんだ!」と、強硬策を命じた。
鬼を皆殺しにしたいようだ。
すると県知事・長門も一蓮托生ということになる。
県警は県公安委員会が管理し、その県公安委員会は知事の下に置かれているからだ。
事実上の県警トップは知事である。
長門は「たまたま病院に視察に来ていて事件に巻き込まれた」のではなく、「鬼たちは長門がいる日を狙って病院を占拠した」のだろう。
✳ブランディングとゾーニングに成功
日テレのプライムタイム(19~23時)には「大病院占拠」の「土曜ドラマ」(22時)を含め、連続ドラマ枠が3つある。
各作品のそれぞれの評価などを度外視すると、ブランディング(ほかのドラマ枠との差別化)とゾーニング(区分け)に全局の中で一番成功していると言える。
まず、「土曜ドラマ」のメインターゲットは誰の目にも分かる通り、若年層。
前作「祈りのカルテ 研修医の謎解き診察記録」(昨年秋ドラマ)もそうだった。
だから、数の多い高齢者が好む作品でないと高くならない世帯視聴率はいつも低い。
半面、若年層向け作品だから、コア視聴率は安定している。
批判もあった「祈りのカルテ」もコア視聴率は堅調だった。
もはや日テレは世帯視聴率を気にしないので、その低さは全く問題にならない。
ちなみに「大病院占拠」の毎話のコア視聴率は4%半前後。
他局には1%台半ばの連ドラもあるから、ハイレベルのコア視聴率トップだ。
世帯視聴率は7%半ば前後で個人視聴率は4%半ば前後。
特に目を引くのがF1(20~34歳の女性)の個人視聴率の高さで、2月4日放送の第4話は6.0%に達した。
この日放送された全局の全番組の中でトップだった。
現在は「リバーサルオーケストラ」を放送中の「水曜ドラマ」(22時)は対象的で、大人の視聴者によく観られている。
落ち着いた作風である上、出演陣の平均年齢も比較的高めだからだろう。
前作「ファーストペンギン!」もそうだったが、職場で頑張る女性を主人公とする作品が5作連続で続いているから、女性からの支持が特に厚い。
2月1日放送の「リバーサルオーケストラ」のF3(女性50歳以上)の個人視聴率は6.7%もあった。
安藤サクラ(36)主演の「ブラッシュアップライフ」が話題の「日曜ドラマ」(22時30分)は現在のテレビ界で最も野心的なドラマ枠に違いない。
ブッ飛んだドラマが多い。
すると自然と若い視聴者が多くなる。
「日曜ドラマ」は毎期、バクチをやっているようなものではないか。
勝てばデカイ。
「あなたの番です」(2019年春ドラマ)などは大当たりした上、映画になった。
一方で「君と世界が終わる日に」(2021年冬ドラマ)などは盛り上がりに欠けた。
日テレはバラエティのイメージが強かったが、ブランディングとゾーニングに成功したので、今後はドラマも存在感を増すに違いない。
テレビ界のドラマ戦線はより混戦化する。
デイリー新潮編集部
(以上引用)
「大病院占拠」、見ています。
最初は、全く期待せずに見始めました。
1話目からあり得ないシチュエーションで「そんな事ないやろ!」と思いながら見ました。
でも、2話以降はあり得なさ過ぎて逆に面白くなってきました。
記事にあるように、めちゃくちゃ展開が速いです。
僕はヒッチコックを思い出さなかったけど、確かに古典的なパターンを上手く取り入れていると思います。
悪が悪を裁くのもベタです。
僕は50代ですが、けっこう楽しんで見ています。
とはいえ、記事を読んで年齢が高い視聴者が見る事にシフトしていないのはその通りだと思いました。
まあ、あれくらい潔い作りの方がより面白くなるのだと思います。
荒唐無稽さを批判したら絶対に楽しめないドラマです。
という事で、今日の「大病院占拠」もツッコミ込みで楽しみたいです。
櫻井翔さんの「ウソだろ!」、今日も期待します。
今日は、こちらのミュージシャンの誕生日です。