前回までのあらすじ


神が創りたもうた天上世界の惑星軌道が楕円にゆがんでいることで、プトレマイオスの天動説は破綻した。


その世界観を更新したコペルニクスの地動説も、やはり楕円軌道の解釈に腐心する。


なぜ太陽を中心に、惑星はまんまるの道すじを描いてくれないのか?


それが問題だ・・・

 



そこで、黎明期を迎えていた中世科学の出番だ。


精密な観測データを元に、ケプラーは惑星の楕円軌道に法則性を見出した。


彼の数式は、天体の運動(一定時間における進行距離と速度と回転芯との関係)を正確に描写しており、惑星が正円軌道を取らないことに、もはや疑いの余地はなくなった。


そしてついに、大砲の弾道研究から微積分法をつくってしまった天才、ニュートンが登場する。

 



さて、ニュートンにはハレーという知り合いがおり、数十年に一度だけ観測されるほうき星の研究をしていた。


「ニュートンさん、星の軌道って、まるいんすか?」
「いや、楕円だ。今、計算が終わった」


その数式に、ハレーが集めた観測記録を導入してみると、次回にほうき星が現れる日時と方角が正確に割り出された。


この天体、すなわちハレー彗星は、太陽を軸として長く偏った楕円軌道を描き、76年おきに地球に最接近するのだ、とその数式は示している。



この構図を見て、ニュートンには思い当たる節があった。


「大砲のタマを頭上高くに撃ち上げたら・・・」


タマは天高くのぼり、やがて失速して曲線を描きはじめ、最高点で進行方向を変えると、今度は地上に向かって加速する。


その放物線は、ケプラーの楕円軌道の法則にぴたりと合致する。


「・・・天体も落下してる?」



要するに、ハレー彗星は高くのぼり(つまりこちらから遠ざかり)、なんらかの力で引き戻され、落ちてくる(こちらに接近する)わけだ。


ただ、落ちる先に地面がないのだ。


落下点を与えられない天体は、永遠に落ちつづけるしかない。


ぐるぐると、ふたつのUターンのピークをつくって。


楕円軌道とはすなわち、落下と上昇の放物線をなめらかにつないだものに過ぎない。


「だとしたら、月なんてりんごと一緒やん!天上世界を落ちてんねやんか!」


 

・・・結論が近そうだが、長くなったのでさらにつづく。