さて今回は、モノを刻んで刻んで、いちばん小さく刻みきった先には、なにが残るか?のやつ。
・・・ギリシャ哲学の昔からある定番ネタですが、その実相をあなたは理解してますか?
物質の最小単位である原子を細かく分解しきると、クォークという素粒子・・・つまり、もうこれ以上小さくは分けられない最後の部品になります。
万物の基本素材であるクォークは、粒ではなく、テレビの電波みたいな波の姿をしてます。
手に触れようにない、「無」にして、真空を震えてひろがるエネルギー。
そんな芒洋とひろがるエネルギーの波を、一点に集めてカプセルみたいに丸めちゃう力が、この世界には存在するのです。
「のり(グルー)」と名付けられた引力がそれで、神さまはぼくらの世界に「万有引力」「電磁の引力」と、この「クォークにだけ働くのり」という三つ(のみ)の引力を用意してくれました。※1
こののりもまた「無にして波」のやつなんですが、クォークを三つひとからげにくっつけて、せまいせまいエリアに閉じ込めてしまう力を持ってます。
そして「のりに捕まったクォーク三個のユニット」こそが、すべての物質の素(水素原子核)となります。
のりの引力は猛烈で、かつ力の及ぶ範囲はものすごく短く、ちょうど水素原子核の半径くらいまでしか届きません(つか、その引力圏のせいで水素原子核はこの大きさになります)。
クォーク(×3)は波なので、のりの引力圏であるせまいエリア内をもわもわと飛び交います。
そして、決して檻の外に逃れることはできません。
果てしなく拡散したがる「手応え無的エネルギー」も、強い引力で一箇所にギュギュッと押し込められますと、それは質量という現象になりまして(おなじみのE=mc2)、これによってクォーク×3ユニットは、物質のタネとしての体裁を整えます。
ちなみに、こうして出来上がる水素原子核は、+に荷電します。※2
すると原子核同士は、同電荷で反発し合って、お互いに触れ合うことはできませんよね。
だけど、二つの原子核をものすごいスピードまで加速させてぶっつけ合わせると、その乗組員であるクォーク同士が、相手ののりの効力が及ぶ距離にまで近づいてしまいます。
電荷の反発の障壁を越えて、今度はのりの引力が効果を発揮するわけです。
すると、あれほど相手を強く拒絶してた原子核同士が、逆に猛烈な力で引き合うはめになり、大爆発(どっかーん!)と同時にくっついて・・・つまり融合してしまうのです。
これが核融合です。
そんな原子核同士を引き離しますと、またまたどっかーん!・・・大爆発しまして、これが核分裂です。
よくニュースに出てくる核ってのは、実は小さな小さな原子核のことでして、その爆発力の元をたどると、クォーク同士を結びつけるのりの力に行き着くのです。
融合や分裂のたびに起こる大爆発は、原子核のかけらがエネルギーとして解放される現象でして、これもまたE=mc2(「エネルギーは質量の別の姿だよ」=そうたいせいりろん)の結果です。
いかがですか?
わけを知ると、世界のあっちやこっちが結びついて面白いですよね。
※1 これらの引斥力と、放射性崩壊を引き起こす力との四つとで、自然界の振る舞いのすべては説明できます。
※2 核を構成するクォークには、+2/3の電荷を持つアップクォークと、−1/3の電荷を持つダウンクォークの2種類があります。
これらのうちの三つが選抜されて核子を構成しますが、アップ・アップ・ダウンというユニットだと、電荷が合計で1になって陽子(つまり水素原子核)となり、アップ・ダウン・ダウンのユニットだと電荷が打ち消され、電荷が0の中性子となります(ぶんすうをたしざんしてね)。
ま、このモデルの論理構成はすべてが数学における机上の仮想ですが、この計算で世界の構造がうまく説明できるので、量子論の根本となってます。