ビリー・ホリデイは、ぼくが最も敬愛する歌うたいさんです。
捨てられたり、犯されたり、からだを売ってみたり、さいなまれて飲んだくれてみたり、やりきれなくてドラッグに溺れてみたり・・・と、凄絶。
さらに、黒人だからと差別を受けつづけ、まったくこっぴどい人生ですが、彼女はすばらしい歌声を持ってたので、歌うことだけでいろんな過酷な試練を乗り越えていったのでした。
その彼女の、最晩年(44だけど)のレコーディングです。
薬と酒のせいで、声はもうざらざら。
むかし愛したレスター・ヤングという色男が後ろでテナーを吹いてますが、こちらもドラッグと病身とでヨボヨボ。
ラッパからは蚊の鳴くようなかすれ音しか出ません。
力の抜けたこの演奏が、実にもの悲しい。
ビリーの歌声にも張りはなく、死を予感させるまでに枯れてますが、いやむしろ、これは刈り込んでそぎ落として、達観して、ついに行き着いた境地の声なんじゃないの?というほどに心に染み入ります。
そしてふたりのお互いを見つめる瞳・・・(映像が残ってるのです)
命の最後のともしびがゆらゆら、てなもんで、なんだか解脱したような穏やかさ。
そしてこのすぐ後に、ビリーはボロ布のように道端で息絶え、レスターも力つき、そろって天に召されるわけです。
このレコーディング時、ふたりはそんな自分の行く末の姿を知ってたんだよなあ・・・
しみじみとおもむき深い、ファイン・アンド・メロウな一曲です。

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園