バカと言われると傷つき、アホと言われるとなんだかうれしい、という価値観が存在する。
「バカ」には先天的なものを断罪する凶暴性の雰囲気がある一方で、「アホ」には後天性の意識的行動への指摘という側面があるので、このふたつは別カテゴリーに分類すべきだろう。
「まぬけ」は愚かな振る舞いに対する評価の感が強く、「たわけ」は愚かに振る舞った人物評価なので、これらも少しニュアンスが違う。
言葉は使い分けなければならない。
「カワイイ」は、今やプリティのことを意味せず、より主観的な「気に入った」「私はこれが好き」という宣言の際に発される句で、その成分中に、周囲に同意を求める圧力をも含む強い表現にまで育っている(しかもグローバルスケールで)。
ヨボヨボ死にかけのおじいちゃんを見たギャルが「カワイイ!」と叫んでる場面に遭遇したら、年配者に向けて失礼だと叱りつける前に、「ああ、この子は醜いと考えがちな老いという観念の中に新しい価値を見出したのだ」と、その含意に思い及ばせよう。
「アホ」と言われてうれしいのは、生来の粗忽(ボケ)が露見したからじゃなく、粗忽を演じたテイを理解する者が振る舞いを肉体表現として完結するまでに昇華(ツッコミ)してくれた、という達成感からくるものなんである。
ただ、露見した本物の粗忽をアホと言われた場合は、素直に恥じ入ろう。
日本語表現は難しいのだ。
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