いつもひとりで酒を飲むとき、親友のオータと乾杯する。
ラグビー部で一緒だったオータは、ボールがころがると犬のように追っかけないではいられないヤツだった。
顔も性格も原始人類に近かったが、ただひどく知性的でもあった。
「薔薇の名前」って本を愛してて、むつかしい文学論もするが、ボーイスカウト時代に木陰で野グソ中にクマザサが肛門を直撃したときの模様を、ランボーがベトナムで拷問を受けるときの物まねで披露しては(いつまでもいつまでもやりつづけるのだ)、オレを死ぬほど笑わせるようなヤツだった。
幼い甥っ子が遊びにくることを知ると、そのためだけに徹夜をして精巧な三葉虫のレプリカをつくり、庭に埋めて待つような男だった。
「さてと、今日は化石の発掘でもするかな」
「え?そんなことができるの?」
「ワタシはここを掘るから、助手のきみはそっちを掘ってくれたまえ」
甥っ子の、好奇心に輝く目と、三葉虫を掘り出したときの心のふるえが伝わってくるようではないか。
魅力的な男なのだった。
ステップを切らないやつでもあった。
楕円球を持ったオータは、まっすぐに走ることしか知らない原始生物だった。
このバックスの切り札は、仲間を巡った最後のパスを受け取ると、サイドラインぎりぎりを、どこまでもどこまでもまっすぐに走った。
そのスピードは驚くべきもので、敵のディフェンスラインを引き裂いてエンドラインに飛び込んでいくその姿は、後方から見守るオレたちの心をどうしようもなく熱くさせた。
ステップを切ることを知らなかったオータは、突然飛び出してきたバカ歩行者をよけきれなくて自分の乗ってるバイクをこかしてしまったけど、今でもヤツの走る姿を思い出してうっとりとすることがある。
あいつが生きてたらなー、と思う。

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園