フルブライト留学制度と聞いて感慨を覚えるのは60歳よりも上の世代ではないでしょうか。戦後すぐの日本はほとんどの人が貧しく、海外に出かけていって勉強したり旅行したりすることは夢のまた夢でした。そうした時代に日本の優秀な学生や学者がアメリカで勉強できる数少ない機会がフルブライト留学制度でした。自由に勉強ができて渡航費や授業料は戦勝国アメリカ政府持ちでしたので、試験は難関でした。
1950年代に渡米した人たちは確かまだ船でアメリカ西海岸にたどり着いたようです。どの留学生たちもまずアメリカの豊かさに圧倒されたことをいろいろなところで述べています。当時の日本人はまだバラックに毛が生えたような住宅に住んでいましたので、アメリカの大都市で聳え立つようなビル郡を見て腰を抜かさんばかりに驚いたようです。
ある政治学者の卵は、クライスラーの本社ビルを仰ぎ見て、日本は100年経ってもアメリカにかなわないと強烈に思い知らされたと後に書いています。今で言えば、アフリカの片田舎から出てきた青年が、丸の内の高層ビル街を見て圧倒されているような状況です。
それからまだ50年ぐらいしか経っていませんが、クライスラーだけでなくGM、フォードといったアメリカの資本主義の象徴のような大会社が倒産の瀬戸際にあり、政府の援助を求めている状況です。世の中に永遠に続くものはないんですが、かつての栄光とのあまりのギャップにただただ驚くばかりです。