介護現場の身体拘束と「鍵」の問題を考える
介護現場では、ご利用者様の安全を守るために様々な配慮が求められます。しかし、その中には「身体拘束」と見なされる行為も含まれる可能性があり、その判断は非常にデリケートです。今回は、介護現場における身体拘束の原則と、特に玄関やエレベーターの施錠について、その考え方を深掘りします。
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1. 介護現場における身体拘束とは?
「身体拘束」は、ご利用者様の行動を制限する行為を指します。資料では、以下の3つの「ロック」として定義されています。
• フィジカルロック(身体拘束):身体的な行動制限。
• ドラッグロック:薬物による行動制限。
• スピーチロック:言葉による行動制限
2. 玄関やエレベーターの施錠は「身体拘束」に該当するのか?
介護施設で玄関やエレベーターの施錠が行われている場合、これは原則として身体拘束に該当するとされています。厚生労働省の「身体拘束ゼロ作戦の推進に関する通知」でも、この見解が示されています。
• 代替手段の検討
• 身体拘束適正化委員会の審議
• 家族との協議
• 定期的な見直し
3. 過去の判例や行政指導から学ぶ「鍵」の考え方
実際に裁判や行政指導でどのような判断が下されたのかを見てみましょう。
a. 施錠が「身体拘束」と認定されたケース
• 事例: グループホームで常時玄関が施錠されており、入居者の家族が「外出の自由が奪われている」と主張し損害賠償を請求しました。
• ポイント: 安全確保が理由であっても、一律の施錠は認められていません。必ず代替策を検討し、実施することが求められます。
b. 施錠が「身体拘束」に該当しないと認められたケース
• 判決: 裁判所は、施錠が必要最小限であり、夜間以外は自由に出入り可能であったため、身体拘束には該当しないと判断しました。
c. 行政指導が行われたケース
• 事例: 特別養護老人ホームで、玄関とエレベーターを常時施錠し、職員のみ解除できる状態でした。家族や一部の入居者から外出希望があったにもかかわらず、施設側は対応しませんでした。
• 指導内容: 東京都の監査で不適切な身体拘束と判断され、改善指導が入りました。
• 改善策: その後施設は、外出希望者にはICカードを渡す、家族や職員が付き添う場合は自由に外出可能にする、といった改善策を導入しました。
• ポイント: 施錠の代替対策を講じること、そして自由の制限を最小限にすることが求められます。
4. まとめ:身体拘束を避けるための大切な視点
これらの事例から、以下の点が明らかになります。
• 一律・常時の施錠は、身体拘束と判断される可能性が高いです。
• やむを得ず施錠する場合でも、時間帯を限定したり、個別対応ができる場合は認められる事例もあります。
• 最も望ましいのは、施錠しないケアです。
• どうしても施錠が必要な場合は、必ず代替対策を確保することが不可欠です。
ご利用者様の安全を守りつつ、その人らしい自由な生活を支援するためには、安易に身体拘束に頼るのではなく、一人ひとりの状況に合わせた多角的なアプローチと、絶え間ない検討が求められます。