【介護現場の身体拘束】2024年度介護報酬改定で適正化が推進!やってはいけない11行為とその弊害とは?
今回は、介護現場における非常に重要なテーマである「身体拘束」について解説します。2024年度の介護報酬改定でも身体拘束等の適正化が推進され、改めてその意味と対策について学ぶ必要性が高まっています。
身体拘束とは?3つの「ロック」と今回の改定のポイント
介護現場における身体拘束は、大きく分けて以下の3つの「ロック」と定義されています。
- フィジカルロック(身体的拘束)
- ドラッグロック(薬物による拘束)
- スピーチロック(言葉による拘束)
今回の動画では、主に「フィジカルロック(身体拘束)」に焦点を当てて解説しています。
【2024年度介護報酬改定の主なポイント】
- 短期入所・多機能系サービス: 3ヶ月に1回以上の委員会開催、指針の整備、年1回以上の研修が義務化されました。
- 未実施の場合: 1年の経過措置期間後、基本報酬が所定単位の1/100に減算されます。
- 訪問・通所・福祉用具貸与・特定福祉用具販売・居宅介護支援: 3原則(緊急やむを得ない場合、非代替性、一時性)を満たす場合に身体拘束は可能ですが、記録が義務化されました。
特に注目すべきは、訪問系や福祉用具系、居宅介護支援といったサービスでも身体拘束が想定され、記録が義務化された点です。例えば、福祉用具貸与ではサイドレール(ベッド柵)の取り付け方一つで利用者がベッドから降りられない状況を作ることも身体拘束に当たる可能性があります。また、居宅介護支援でケアマネージャーが利用者の立ち上がりを防ぐ工夫を提案した場合も、身体拘束と解釈される可能性があるため、「自分には関係ない」と考えるのではなく、全ての介護従事者が学び直す必要があります。
国が規定する「やってはいけない」身体拘束の11行為
国が身体拘束として規定している、具体的に「やってはいけない」11の行為を見ていきましょう。
- 徘徊しないように、車椅子や椅子、ベッドに体幹や四肢を紐などで縛る。
- 転倒しないように、ベッドに体幹や四肢を紐で縛る。
- 自分で降りられないように、ベッド柵で囲む。
- 点滴や経管栄養などのチューブを抜かないように、四肢を紐などで縛る。
- 点滴や経管栄養などのチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、指の機能を制限するミトン型の手袋をつける。
- 車椅子や椅子からずり落ちたり、立ち上がらないように、Y字型拘束帯や腰ベルト、車椅子テーブルをつける。
- 食事の際にテーブルをつけること自体は問題ありませんが、立ち上がらせない目的で常態化させる場合は身体拘束に該当します。
- 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを防ぐような椅子を使用する。
- 私たちには簡単に立ち上がれる低い椅子でも、筋力やバランスが衰えている高齢者にとっては、動けなくなるため身体拘束に当たります。
- 脱衣やおむつ外しを制限するために、つなぎ服を着せる。
- 他人への迷惑行為を防ぐため、ベッドなどに体幹や四肢を紐で縛る。
- 行動を落ち着かせるために、抗精神薬を過剰に服用させる。
- 自分の意思で開けることのできない居室などに隔離する。
- 体自体を拘束しなくても、部屋や玄関の鍵を閉めることも身体拘束に当たります。
これらの行為は、「徘徊しないように」「転倒しないように」「ずり落ちないように」「抜かないように」といった**「安全のため」「事故を防ぐため」といった理由があっても、国は禁止**しています。
なぜ身体拘束は禁止されているのか?その「弊害」とは
安全のためであっても身体拘束が禁止されているのは、「弊害」があるからです。身体拘束は、身体的、精神的、社会的に様々な弊害を引き起こします。
- 身体的弊害: 関節の拘縮、筋力の低下、褥瘡(じょくそう)の発生、食欲低下、心肺機能の低下、感染症への抵抗力低下など。また、拘束を解こうとする本人による転倒や転落、拘束具による窒息といった大事故のリスクもあります。
- 精神的弊害: 不安、怒り、屈辱、諦め、尊厳の侵害、認知症状態の進行など。拘束された様子を見た家族の精神的苦痛や、職員のモチベーション低下にもつながります。
- 社会的弊害: 「あの施設は利用者を縛っているらしい」といった噂により、介護保険サービス全体に対する社会的な不信や偏見を引き起こす恐れがあります。また、心身機能の低下によりさらなる医療的処置が必要となり、社会全体の経済的負担にもつながります。
身体拘束は「根本的な問題解決」にならない
身体拘束は、根本的な問題解決にはなりません。
- 例えば、体を掻かせないようにミトンをつければ、一時的に皮膚の傷は防げるかもしれませんが、「かゆみ」そのものは解決していません。
- ベッド柵をつけることで転落のリスクは減るかもしれませんが、自分でトイレに行けなくなり、排泄の自立を奪うことにつながります。また、かえって柵を乗り越えようとして大きな怪我につながる可能性もあります。
- 認知症の方に拘束を行うと、認知症が悪化したり、BPSD(行動・心理症状)の悪化、せん妄が出現することがあります。それを薬物療法で鎮静化させたり、さらなる安全のために身体拘束を行うといった「悪循環」を引き起こすケースも少なくありません。結果として、一度身体拘束をすると中止できなくなることもあります。
身体拘束はなぜ行ってはいけないのか?それは、**「弊害があるから」**に他なりません。
利用される方には、そもそも「動こう」とする欲求や動機があります。なぜ動こうとされているのか、その理由や原因を考えることが、身体拘束をしないケアの第一歩です。