介護現場では、利用者が自分らしい生活を送ろうとする中で、転倒などの事故は完全に避けられない部分もあります。しかし、その中でも「防げる事故」と「防げない事故」があります。特に介護中のミスによる事故は防ぐことが可能であり、同様の事故が再発する可能性も高いため、その都度報告書を作成することが非常に重要です。
• ヒヤリハット報告書:事故につながりかねない出来事を報告する書類です。
• 事故報告書:事故の状況、原因、その後の対応を詳細に報告するものです。
「ハインリッヒの法則」事故防止の入り口として捉え、検証することが事故を防ぐ上で不可欠です。
適切な記録は、事故の要因に気づき、日々のケアを振り返るきっかけとなります。また、しっかりと記録する習慣は、介護者自身のケアスキルの向上にもつながります。
正しく伝えるための3つのコツ
報告書は、見た人が正確に理解できるよう、客観的かつ簡潔に書くことが重要です。
1. 短い文章で書く
◦ **「いつ、誰が、どこで、何を、なぜ、どうした」**のうち、分かる部分だけでも簡潔に記載しましょう。
◦ 内容を絞り、1文ごとに改行することで、より分かりやすくなります。
◦ 記載例(転倒しそうになった事例):昼食後、〇〇様を車椅子に乗せ、〇〇公園を散歩中、車輪が小石につまづき転倒しそうになった。急いでブレーキをかけたため転倒せずに済んだ。
2. 客観的に書く
◦ 報告書には、主観を交えず、見たままの内容、聞いたままの言葉をそのまま書き留めます。
◦ 推測を入れる場合は、必ず文章の最後に「~と思われる」といった形で記載しましょう。
◦ 記載例(倒れていた事例):〇〇様が廊下にうつ伏せで倒れているのを見つけた。傍に車椅子があった。立ち上がろうとして車椅子から落ちたものと思われる。
3. 専門用語・略語・施設独自の言葉は使わない
◦ 職員だけでなく、利用者の家族など外部の人が見た場合にも理解できるように書く必要があります。
◦ 記載例(排泄の事例):〇〇様が便器の前で、お尻を床につけた状態で座っていた。ナースコールを押さずにリハビリパンツを上げようとしたものと思われる。
報告書を「自己防止」に活かす方法
報告書はただ記入するだけでなく、分析し、具体的な改善策に結びつけることで真価を発揮します。
• データを集計・分析する:報告書を収集し、事故が起きた時間、場所、内容などを集計・分析することで、傾向を把握できます。例えば、食事前後の事故が多いことや、転倒・車椅子からのずり落ちの報告が増えている、といった傾向を発見できます。
• 改善策を立て、実行する:分析結果に基づき、具体的な対策を講じます。例えば、食事前後の利用者の見守りが不十分になりがちであれば、その時間帯にパート職員やボランティアを増員したり、職員の休憩時間を分散したりすることで、見守りを強化し、事故を減少させることができます。
• 情報共有とグループワークの実施:事故内容を職員全員で共有することは、ケアの質向上に非常に意味のあることです。**「どうして起こったのか」「どうすればよかったのか」「そのために何が必要か」**を考え、話し合うことで、職員自身の介護を見直す機会にもなります。
◦ グループワーク:一つの事例を取り上げ、グループごとに話し合うのが効果的です。この際、実際の報告書の事例をそのまま使うのではなく、架空の日時や利用者情報を用いることで、提出者を特定しにくくし、職員が報告書の提出をためらわないように配慮することが重要です。ケアを行う職員だけでなく、施設運営に関わる全職員が参加することで、異なる視点からの意見が生まれ、新たな気づきにつながることもあります。
もしもの時に介護職を守るために
万が一、重大な事故が発生してしまった場合、事故報告書は行政へ提出する書類のベースとなり、事業所として適切な対応が行われたかどうかの証しとなります。これにより、当事者である介護職や事業所自身が守られることにつながります。報告書には、起きたことや対応を正確に書くのはもちろん、日々のケア記録も必ず記録に残しましょう。
また、家族とのトラブルを避けるためにも、日頃から家族に「日常生活における事故の可能性をゼロにすることは不可能である」ことを理解してもらう必要があります。報告書を通じて事故の内容を家族と共有し、信頼と協力関係を築いていくことも大切です。
まとめ
ヒヤリハット・事故報告書は、ただの事務作業ではありません。5W1Hを活用し、短い文章で分かりやすい言葉を使うことを意識すれば、報告書作成はそれほど難しくありません。この報告書を最大限に活用し、職員のミスによる事故を防ぎ、利用者の皆さんがより安全で質の高いケアを受けられるよう、日々の業務に役立てていきましょう。