1. 熱中症とは?体の中で何が起こるのか
熱中症は、**「体が熱を作ってしまい、その熱を体外に捨てられない状態」**です。 風邪などで高熱が出るのは、脳が体温を高く設定して病原菌と戦おうとしているためですが、熱中症の場合はそうではありません。体は平熱を保とうとしているのに、熱が体内にこもってしまうのが熱中症です。
私たちの体は、エネルギーを作り出す過程で約6割の熱を発生させます。この熱は、通常以下の2つの方法で体の外に捨てられます:
• 放熱: 血液が体の熱を体表面に運び、そこから空気中に放出します。外の気温が涼しいほど効果的です。
• 気化熱: 汗が蒸発する際に体の熱を奪い、体を冷やします。湿度が高いと汗が乾きにくいため、この効果が低下します。
これらの機能がうまく働かないと、体温が上昇し、熱中症になってしまうのです。
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2. 熱中症の2つのタイプ
熱中症は大きく分けて2つのタイプがあり、それぞれ特徴が異なります。
1. 労作性熱中症(若者や体力のある人に多い)
**「元気な人が、暑い環境の中で体を動かすことで、一気に熱中症になるパターン」**です。
• 主な対象者: 筋肉運動をしている人、スポーツをする人、肉体労働をする人、若者、子どもたち。
• 原因: 激しい運動や肉体労働によって大量の熱が体内で作られる一方、暑さ、高湿度、不十分な水分補給、休憩不足、不適切な服装などが原因で熱の放出が間に合わない場合に発生します。
• 例: 運動会の練習中の子どもたち、災害地でボランティア活動をする人、屋外での肉体労働者。
• 特徴: 発症しても比較的軽症で済むことが多く、適切な治療を受ければすぐに回復し、その日のうちに帰宅できるケースも多いです。しかし、意識障害などが見られる場合は重症化している可能性があります。
2. 非労作性熱中症(高齢者や持病のある人に多い)
**「体を動かしていないのに、暑さや高湿度といった環境要因だけで熱中症になり、重症化するパターン」**です。
• 主な対象者: 高齢者、乳幼児、持病がある方(心臓病、腎臓病、高血圧など)、体の調子が悪い方。
• 原因: 自宅などの屋内でエアコンを使わずに過ごすなど、暑い環境に長時間いることが原因です。高齢者は体の熱産生は少ないものの、心臓機能の低下や持病、服用している薬(利尿薬など)の影響で熱を放散する能力が低下しているため、熱中症になりやすい「熱中症弱者」とされます。
• 特徴: 1日で発症することは少なく、数日にわたる暑さ(猛暑日や熱帯夜)で徐々に体調が悪化し、重症化してから発見されるケースが多いです。発見が遅れると命に関わることもあります。
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3. 熱中症のリスクを高める3つの条件
熱中症は、以下の3つの条件が重なることで発生しやすくなります:
1. 環境: **気温が高い、日当たりが良い、風通しが悪い、エアコンがない、湿度が高い(蒸し暑い)**場所。
2. 体: 高齢者、乳幼児、肥満、病気(風邪、下痢、心臓病など)、ストレス、二日酔い、寝不足など、体調が悪い人。
3. 行動: 激しい運動、不慣れな仕事、長時間にわたる活動、休憩が取れない、水分補給がしにくいといった状況。
これらの悪条件が重なるほど、熱中症のリスクは高まります。特に、初日や数日間の活動で熱中症になるケースが多いため、暑さ慣れしていない時期や不慣れな作業には注意が必要です。
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4. 熱中症を予防するために
熱中症は、事前の対策で十分に予防が可能です。
• 水分補給: 冷たい水やスポーツドリンクをこまめに摂りましょう。汗をたくさんかく場合は、塩分も一緒に摂ることが重要です。
• 体を冷やす:
◦ エアコンや扇風機を活用し、室温を下げる。
◦ 日陰や涼しい場所で休憩する。
◦ 氷を入れた水筒を持ち歩く、帽子や日傘を利用する。
◦ 必要に応じて、体を水で濡らしたり、保冷剤を活用したりする。
• 休息と体調管理:
◦ 活動時間を調整し、休憩をこまめにとる。
◦ 涼しい場所(エアコンの効いた室内)でしっかり休み、水分補給を行う。
◦ 寝不足や二日酔いなど、体調が悪い時は無理をしない。
◦ 不慣れな活動は避け、徐々に体を暑さに慣らす。
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5. 熱中症かな?と思ったら、どうする?【応急処置と救急車を呼ぶ基準】
もし誰かが熱中症の症状を示したら、以下の「FIRE」を意識した応急処置が重要です:
• Fire (火消し)= 冷却 (Cool)
• Inspiration (息を吸う)= 安静 (Rest)
• Replacement (補充)= 水分補給 (Fluid)
• Emergency call (緊急連絡)= 119番通報 (119)
具体的な手順は以下の通りです:
1. 熱中症を疑う: 暑い環境で体調不良を訴える人がいたら、まず熱中症を疑います。
2. 声かけと意識確認: 「大丈夫ですか?」と声をかけ、意識があるか確認します。
3. 涼しい場所へ移動: 日陰よりもエアコンの効いた室内へ移動させ、体を休ませます。
◦ 複数人で助ける: 一人で助けようとせず、性別にかかわらず複数人で対応しましょう。
4. 水分補給: 冷たい水を自分で飲めるか確認し、飲ませます。
5. 体を冷やす: 服を緩め、体を冷やします(氷を当てる、水をかけるなど)。
6. 救急車を呼ぶ基準:
◦ 意識がない、意識が朦朧としている、言動がおかしい、呼びかけに反応しない。
◦ 水分が自分で飲めない。
◦ 応急処置をしても症状が改善しない、または悪化する。
◦ これらの場合は、ためらわずに119番通報しましょう。軽症であれば救急車を呼ばずに医療機関を受診することも選択肢ですが、意識障害がある場合は一刻を争います。
**「早く冷やした方が予後が良い」**ことが分かっています。もしもの時のために、応急処置の準備をしておくことが非常に大切です。
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6. 日本における熱中症の現状と課題
日本では、熱中症による死亡者数が2010年に1700人、2018年には1500人を超えるなど、猛暑の年には多くの命が失われています。また、2018年には熱中症で9万人以上が救急搬送されました。熱中症への認識が高まり、救急車を呼ぶケースや病院での診断数が増加していることも背景にあります。
特に高齢者の熱中症は重症化しやすい傾向があり、入院・死亡者数の多くを占めています。一方、若者や子どもたちの労作性熱中症は、予防対策の普及により重症化の割合が減少傾向にあります。
熱中症は、予防できる病気であり、早期の対応で回復しやすい病気です。正しい知識を身につけ、日頃から対策を心がけ、夏の健康を守りましょう。