いや~、龍馬伝、面白かったですね。
いつも土曜の昼に食事(今日はカレーライス)をしながら一回遅れた回を見ています。
.
ほんと、今の日本と幕末の日本とがダブって見えます。
私たちも、一人一人、同じような人生を繰り返してじょじょに進歩していきますが、
国も同じように、似たサイクルを繰り返しながら続いていくのですね。
意識を拡大すると文明もまた、同じように栄枯盛衰(えいこせいすい)を繰り返し、
星も、銀河も、そして宇宙自体も移ろっていくのかなぁとも、思ってしまいます。
さて、
前回は、日本語の特殊性1『日本語が生み出す思いやり社会』
で、日本語が、自然と相手への思い遣りの心を育てることをご紹介しました。
今回は、同じメルマガ『国際派日本人養成講座』「H14.05.12発表」から
『虫の音や雨音などを日本人は左脳で受けとめ、西洋人は右脳で聞く!?』
をご紹介します。
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国際派日本人養成講座
・メルマガ名:国際派日本人養成講座
・メルマガ登録のURL:http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/
・記事の編集長名又は文責者名:伊勢雅臣
■1.虫の音に気がつかない!?■
東京医科歯科大学の角田忠信教授が、1987年1月にキューバ
のハバナで開かれた第一回国際学会「中枢神経系の病態生理学
とその代償」に参加した時の事である。キューバではいまだ戦
時体制が続いており、西側諸国からの参加者は角田教授一人だ
った。開会式の前夜に歓迎会が開かれ、東欧圏から大勢の科学
者が参加していた。キューバ人の男性が力強いスペイン語で熱
弁をふるう。
しかし、教授は会場を覆う激しい「虫の音」に気をとられて
いた。なるほど暑い国だな、と感心して、周囲の人に何という
虫かと尋ねてみたが、だれも何も聞こえないという。教授には
「蝉しぐれ」のように聞こえるのに!
午前2時頃、ようやくパーティが終わって、キューバ人の若
い男女二人と帰途についたが、静かな夜道には、さきほどより
ももっと激しく虫の音が聞こえる。教授が何度も虫の鳴く草む
らを指して示しても、二人は立ち止まって真剣に聴き入るのだ
が、何も聞こえないようだ。不思議そうに顔を見合わせては、
お疲れでしょうからゆっくりお休みください、というばかりで
あった。
教授は毎日、この二人と行動をともにしたが、3日目になっ
てようやく男性は虫の音に気づくようになった。しかし、それ
以上の感心は示さなかった。女性の方は、ついに一週間しても
分からないままで終わった。どうも日本人の耳と、外国人の耳
は違いがあるようだ。
■2.左脳と右脳■
こうした聴覚の違いを切り口に、角田教授は日本人の脳が他
の民族の脳と違う点を生理学的に追求してきた。その結果が驚
くべき発見につながった。人間の脳は右脳と左脳とに分かれ、
それぞれ得意分野がある。右脳は音楽脳とも呼ばれ、音楽や機
械音、雑音を処理する。左脳は言語脳と呼ばれ、人間の話す声
の理解など、論理的知的な処理を受け持つ。ここまでは日本人
も西洋人も一緒である。
ところが、虫の音をどちらの脳で聴くかという点で違いが見
つかった。西洋人は虫の音を機械音や雑音と同様に音楽脳で処
理するのに対し、日本人は言語脳で受けとめる、ということが、
角田教授の実験であきらかになった。日本人は虫の音を「虫の
声」として聞いているということになる。
キューバ人にとっては、会場を覆う激しい虫の音も、いつも
の騒々しい雑音だと慣れてしまえば、意識にのぼらなくなって
しまう。我々でも線路沿いに長年住んでいれば、騒音に慣れて、
電車が通っても意識しなくなってしまうのと同じ現象なのだろ
う。しかし、虫の音は日本人は人の声と同様に言語脳で聞いて
いるので、雑音として聞き流すことはできない。スペイン語の
熱弁と激しい虫の音は、教授の左脳でぶつかっていたのだ。
このような特徴は、世界でも日本人とポリネシア人だけに見
られ、中国人や韓国人も西洋型を示すという。さらに興味深い
ことは、日本人でも外国語を母語として育てられると西洋型
となり、外国人でも日本語を母語として育つと日本人型にな
ってしまう、というのである。脳の物理的構造というハードウ
ェアの問題ではなく、幼児期にまず母語としてどの言語を教
わったのか、というソフトウェアの問題らしい。
■3.左脳か、右脳かの実験■
この違いを考察する前に、こうした結果がどのような実験で
得られたのか、簡単に見ておこう。人間の耳から脳への神経系
の構造は、左耳から入った音の情報は右脳に行き、右耳から入
ると左脳に行く、という交叉状態になっている。
そこで、左右の耳に同時に違ったメロディーを流して、その
後で、どちらのメロディーを聴きとれたかを調べると、常に左
耳から聴いた方がよく認識されている事が分かる。これで音楽
は、左耳、すなわち、右脳の方が得意だと分かる。同様に、違
う言葉を左右から同時に聴かせると、右耳、すなわち左脳の方
がよく認識する。我々がほとんどの場合、右耳に受話器をあて
るのは、このためだそうだ。さらに複雑なテスト方法もあるが、
これが最も基本的な実験方法である。
こういう実験で、いろいろな音で、左脳と右脳の違いを調べ
ると、音楽、機械音、雑音は右脳、言語音は左脳というのは、
日本人も西洋人も共通であるが、違いが出るのは、母音、泣
き・笑い・嘆き、虫や動物の鳴き声、波、風、雨の音、小川の
せせらぎ、邦楽器音などは、日本人は言語と同様の左脳で聴き、
西洋人は楽器や雑音と同じく右脳で聴いていることが分かった。
■4.アメリカでの虫の音?■
虫の音と言えば、筆者にもこんな個人的な体験がある。ボス
トンから内陸部に車で2時間ほど入った人里離れた山中で、見
晴らしの良い所があったので、車を止めて一休みしていると、
昼間なのに虫がしきりに鳴いている。
それを聞いているうちに、ふと、そう言えばカリフォルニア
に4年も住んでいたが、虫の音に聴き入った覚えがないな、と
気がついた。乾燥したカリフォルニアでも沿岸部にはかなり緑
も多い。しかし私の記憶の中の光景では、なぜか常に豊かな緑
がシーンと静まりかえっているのだ。やかましい蝉しぐれだと
か、秋の夜長の虫の音だとかは、どうしても思い出せない。
アメリカ人が虫というとまず思い浮かべるのは、モスキート
(蚊)、フライ(蠅)、ビー(蜂)など、害虫の類だ。アメリ
カでは蜂はまだしも、蚊や蠅はほとんどお目にかからない。だ
からたまに蠅を見かけると、とんでもない不衛生な所だという
感じがする。文明生活の敵だとして、とことん退治してしまっ
たのだろうか?
また昆虫を示す単語には、悪い語感が付随している場合が多
い。"insect"には「虫けらのような人、卑しむべき人」という
使い方があり、"bug"は、「悩ましい、てこずらせる」から、
転じてソフトウェアの「バグ」などと使われる。日本語なら
「虫けら」とか、蚤、シラミのイメージだ。
虫はすべて害虫であり、その鳴く音も雑音と同様に聞くとな
れば、蚊や蠅を退治する殺虫剤で、見境なく一緒に全滅させて
しまったとしても無理はない。
■5.虫の音に聴き入る文化■
日本では対照的に、虫の音に聴き入る文化がある。現代でも
コオロギ類の画像と鳴き声を納めたインターネットサイトから、
飼育法を解説した書籍まで無数にある。「虫の声」という以下
の童謡は、虫の音に聴き入る文化が子供の頃から親しまれてい
る一例である。
あれ松虫が鳴いている
チンチロ チンチロ チンチロリン
あれ 鈴虫も鳴き出した
リン リン リン リン リーン リン
秋の夜長を鳴きとおす
ああ おもしろい 虫の声
この伝統は古代にまで遡る。
夕月夜心もしのに白露の置くこの庭にこおろぎ鳴くも
(万葉集、しのに:しっとりと濡れて、しみじみした気分
で)
近世では、明治天皇の御製が心に残る。
ひとりしてしづかにきけば聞くままにしげくなりゆくむし
のこゑかな
一人静かに耳を傾けると、虫の声がより一層繁く聞こえてく
るという、いかにも精密な心理描写である。また虫の「声」と
いう表現が、すでに虫の音も言語脳で聞くという角田教授の発
見と符合している。もう一つ明治天皇の御歌を引いておこう。
虫声
さまざまの虫のこゑにもしられけり生きとし生けるものの
思ひは
松虫や鈴虫など、さまざまな虫がさまざまな声で鳴いている。
それらの声に「生きとし生けるもの」のさまざまな思いが知ら
れる、というのである。人も虫もともに「生きとし生けるも
の」として、等しく「声」や「思い」を持つという日本人の自
然観がうかがわれる。虫の音も人の声と同様に言語脳で聞く、
という日本人の特性は、この文化に見事に照応している。
■6.犬は「ワンワン」、猫は「ニャーニャー」■
角田教授の発見では、虫の音だけでなく、そのほかの動物の
鳴き声、波、風、雨の音、小川のせせらぎまで、日本人は言語
脳で聞いているという。これまた山や川や海まで、ありとあら
ゆる自然物に神が宿り、人間はその一員に過ぎないという日本
古来からの自然観に合致している。
幼稚園から小学校の4、5年ぐらいの日本の子供に、犬
はなんといって鳴くかというと、ワンワンというにきまっ
ているのです。マツムシはチンチロリンという。外国人に
聞きますと、ひじょうに困るのです。なんというていいか
一生懸命考えて記憶を呼び出して、ウォーウォーといった
り、ワーワーと言ったり。[1,p122 対談者の園原太郎・京
都大学名誉教授(心理学)の発言]
日本の子供が「ワンワン」と答えるのは当然である。親が犬
を指して「ワンワン」と教えるのであるから。同様に猫は「ニ
ャーニャー」、牛は「モーモー」、豚は「ブウブウ」、小川は
「サラサラ」、波は「ザブーン」、雨は「シトシト」、風は
「ビュウビュウ」。まるで自然物はすべて「声」をもつかのよ
うである。
このような擬声語、擬音語が高度に発達しているという点が、
日本語の特徴である。幼児がこれらを最初から学んでくれば、
虫や動物の鳴き声も自然音もすべて言語の一部として、言語脳
で処理するというのも当然かもしれない。あるいは、逆に、言
語脳で処理するから、言語の一部として擬声語、擬音語が豊か
に発達したのか?
いずれにしろ、自然音を言語脳で受けとめるという日本人の
生理的特徴と、擬声語・擬音語が高度に発達したという日本語
の言語学的特徴と、さらに自然物にはすべて神が宿っていると
いう日本的自然観との3点セットが、見事に我々の中に揃って
いるのである。
■7.人種ではなく、母語の違い■
角田教授の発見で興味深いのは、自然音を言語脳で受けめる
という日本型の特徴が、日本人や日系人という「血筋」の問題
ではなく、日本語を母語として最初に覚えたかどうか、という
点で決まるということである。
その端的な例として、南米での日系人10人を調査したデー
タがある。これらの日系人は1名を除いて、ポルトガル語やス
ペイン語を母語として育った人々で、その脳はすべて西洋型で
あった。唯一日本型を示した例外は、お父さんが徹底的な日本
語教育を施して、10歳になるまでポルトガル語をまったく知
らずに過ごした女性であった。その後、ブラジルの小学校に入
り、大学まで出たのだが、この女性だけはいまだに自然音を言
語脳でとらえるという完全な日本型だった。
逆に朝鮮人・韓国人はもともと西洋型なのだが、日本で日本
語を母語として育った在日の人々は、完全な日本型になってい
る。
こう考えると、西洋型か日本型かは人種の違いではなく、育
った母語の違いである可能性が高い。「日本人の脳」というよ
り、「日本語の脳」と言うべきだろう。角田教授の今までの調
査では、日本語と同じパターンは世界でもポリネシア語でしか
見つかっていない。
■8.違うがゆえに独創的なものが生まれる■
日本語による脳の違いとは、我々にとってどのような意味を
持つのだろうか? 理論物理学者の湯川秀樹博士は、角田教授
との対談でこう語る。[1,p114]
つまり日本人はいままでなんとなく情緒的であるという
ていた。(西欧人が)論理的であるのに対して、より情緒
的であるといっていたのが、構造的、機能的、あるいは文
化といってもいいけれども、そういうところに対応する違
いがあったということが、角田さんのご研究ではっきりし
たわけです。
そうするとそこで私が考えますことは、その違うという
ことを生かすという方向です。違うということは上とか下
とかいうことではなくて、その違いということを生かす。
(中略)違うがゆえに独創的なものが生まれるのである。
西洋に比べてあかん、劣っているという考え方が根深くあ
ったけれども、そういう受け取り方をしたら劣等感を深め
る一方です。
「違うがゆえに独創的なものが生まれる」とは、独創的な中間
子理論でノーベル賞を受賞した湯川博士の言葉だけに重みがあ
る。日本語の脳の違いは人類の多様性増大に貢献しているわけ
で、「虫の音に耳を傾ける文化」などは人類全体の文化をより
豊かにする独創的なものと言える。
こうした「生きとし生けるもの」の「声」に耳を傾けるとい
う自然に対する敬虔な姿勢は、今後「宇宙船地球号」の中です
べての生命と共生していくために貴重な示唆を与えうる。
我々が受け継いだこの「日本語の脳」の違いを意識的に極め、
その独創性をよりよく発揮していくことは、我々日本人の全世
界に対する責務とも言えるだろう。
(文責:伊勢雅臣)
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ おたより _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
■「日本語が作る脳」について あゆみさんより
同僚に外国人がおりますが、私達日本人が発する擬音語、擬
声語をとても面白く感じるようです。単に東洋と西洋文化の違
いなのかな程度に思っておりましたが、今回の右脳、左脳の受
けとめ方と、東洋、西洋の切り分けではなく「日本語」を母国
語にしているかどうかにより違いが出てくるという発見は少し
ばかりうれしくも感じました。
単に音だけではなく、蝉の声に夏を感じ、風鈴の音に涼を求
めると言うような四季、自然と言葉が繋がっている、そしてそ
れらが粋や風流などの文化を形成しているのかと思います。こ
の美しい「日本語」を今一度見直したいと思いました。
ロイさんより
私は大学で言語学を学びました。その時に世界の言語の中で
唯一日本語にしかない特徴というのがあると教えられました。
それは「被害の受け身」というもので、例えば「雨に降られ
る」「親に死なれる」といった表現のことです。
通常、受動態というものは能動態(主語+動詞+目的語)が
あってその目的語を主語に移動させた形です。しかし、被害の
受け身の場合にはもともと「雨が降る」のように目的語があり
ません。それを受け身にしてしまうのは現在では日本語にしか
ない特徴だということです。(厳密には、昔のモンゴルの言葉
にもあったらしいですが。)このような独自性を持った日本語
を是非とも大切にしていきたいものです。
SKさん
日本ほど、マンガが発達している国はないように思います。
そしてマンガ表現としての豊かさを出しているものに「描き文
字」があると思うのです。「描き文字」というのは、せりふと
は別に、絵の中に描きこまれている効果音のことです。「ガー
ン」とか「ドッカーン」とか「ウオーッ」とかありますよね。
この表現が、日本のマンガは非常に幅が広く豊かです。まず、
ひらがな、カタカナ、アルファベット、漢字と文字の種類自体
が豊富ですし、その”音の感じ”を適切に表す絵文字表現のバ
リエーションも豊富です。
マンガとは、一切音のない物語表現です。ですから、物語の
なかで出てくる「音」は目で見える形で表現しなくてはなりま
せん。しかも一瞬で視覚的に表現しなければならないのでその
効果音を文字にして表さなければなりません。(言語のみで物
語が語られる小説では、「激しい爆発音が鳴り響いた」のよう
な文章での表現が可能です)
その、「音」を文字にする能力は、今回の日本語の脳によっ
て作られていることがわかり、「なるほどー!!」と納得した
のでした。音を文字に置き換える能力(そしてそれを一瞬で感
覚的に理解する能力)は、さまざまな音を声として聞く日本語
脳ならでは、なのですね。
*******************************
改めまして奥本です。
今回も、だいぶん長くなりましたが、ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
本文もためになりますが、
被害の受け身やマンガ大国への洞察など、このメルマガの読者さんからのコメントにもいろいろ気づきがありますね。
日本語で育った人は、虫の音や雨音などを左脳で受けとめ、
英語など日本語ではない言語で育った人は、右脳で聞くことがわかりました。
そして、脳科学と文化から
1.生理的特徴:日本語を話すと、自然音を言語脳で受けとめるようになる
2.言語学的特徴:擬声語・擬音語が高度に発達した日本語
3.日本的自然観:自然物にはすべて神が宿っている
という考察がされておりました。
普通は、日本語をこんなに深く考えないので、普段使っている言語なだけにおもしろいですね。
では、
なぜ、日本語を話すと自然音を言語脳で受けとめるようになるのでしょうか?
今日は、長くなりましたので、次回にそのあたりをご紹介します。
次回は「日本語の特殊性3」ということで最もお伝えしたい
◆日本語の特殊性「アップダウン構造」
◆日本の技術力の高さは日本語にある
◆日本語全体の究極主語は?
◆日本の宗教の特殊性
◆日本語は祈りそのもの
をお送りします。
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